会社分割手続を実行するときに避けては通れない会社計算規則・・・
キーーッってなりますよね。
出来るだけ分かりやすく説明します。
承継する財産が プラスのとき
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(会社計算規則49Ⅱ本文) |
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承継する財産が マイナスのとき |
(会社計算規則49Ⅱ但書) |
【1】新設分割における株主資本等変動額とは(会社計算規則49Ⅰ)
=設立会社が可能な株主資本等の総額
場合 |
株主資本等変動額 |
① 分割後に分割会社による設立会社の支配が継続する場合 (継続しないことが明確でない場合を含む) |
帳簿価額を基礎に算定 |
② 分割後に分割会社による設立会社の支配が継続しないこと明確な場合 | 時価 〃 |
③ 事業分離にならない会社分割の場合 | 時価 〃 |
(【1】の解説については、改正会社法対応版・会社法関係法務省令 逐条実務紹介/清文社/787p以下を参照した。)
【2】利益剰余金が変動しない理由
∵資本取引のときは、資本金・資本剰余金で処理すべきで、利益剰余金は営業活動によって生じた利益しか計上できないという会計処理をここでも確認したもの。
分割対価の全部を、新設会社の株式によるときには、あたかも分割会社の帳簿を二つに割って、一部を新設会社に承継させた形になる。
そこで
「分割会社の減少する資本金・資本剰余金・利益剰余金」をそのまま「新設会社の増加する資本金・資本剰余金・利益剰余金」とできる(会社計算規則50Ⅰ)。
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新設分割の場合には、分割対価がないことは想定されていません。
新設分割によって会社を設立する以上、最低一株は発行することになるからです。
また、下記新設分割の条文でも「交付する」となっており、必ず交付する必要があります。
会社法第763条(株式会社を設立する新設分割計画書) 第1項 一又は二以上の株式会社又は合同会社が新設分割をする場合において、新設分割により設立する会社(以下この編において「新設分割設立会社」という。)が株式会社であるときは、新設分割計画において、次に掲げる事項を定めなければならない。 ⑥ 新設分割設立株式会社が新設分割に際して新設分割会社に対して交付するその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる当該新設分割設立株式会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該新設分割設立株式会社の資本金及び準備金の額に関する事項 ⑧ 新設分割設立株式会社が新設分割に際して新設分割会社に対してその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる当該新設分割設立株式会社の社債等を交付するときは、当該社債等についての次に掲げる事項(イ~ハ略) |
CF.吸収分割の場合
下記吸収分割の条文では「交付するときは」となっており、交付しない場合も想定されています。
会社法第758条(株式会社に権利義務を承継させる吸収分割契約) 会社が吸収分割をする場合において、吸収分割承継会社が株式会社であるときは、吸収分割契約において、次に掲げる事項を定めなければならない。 ④ 吸収分割承継株式会社が吸収分割に際して吸収分割会社に対してその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる金銭等を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項 |
目的に応じて、どの条文を使うか選択して使います。
目的 | 使う条文 | 分割対価 | 他の注意点 |
設立会社の資本金を増やしたくない | 49ⅠⅡ | 全部を設立会社株式 | 分割計画において、増加資本金をゼロと定める。 |
49ⅠⅡ | 一部を設立会社株式 | 分割計画において、増加資本金をゼロと定める。 | |
50Ⅰ | 全部を設立会社株式 | 予め分割会社の資本金を減額しなければよい。 | |
☓ | なしとする。 | 分割対価をなしとする新設分割は認められない。 | |
設立会社の利益剰余金を増やしたい |
50Ⅰ | 全部を設立会社株式 | 分割会社の利益剰余金を減らした同額、設立会社の利益剰余金が増える。 |
× | 一部を設立会社株式 | 利益剰余金は増えない。∵49Ⅱ本文により利益剰余金は変動しない。 | |
☓ | なしとする。 | 分割対価をなしとする新設分割は認められない。 |
また
50Ⅱは、 新設分割手続を行なっても、分割会社の資本金・資本準備金が減少しない原則を前提に、 50Ⅰの資本金を、設立会社に承継する場合には、分割会社において、会社分割手続の前提として、会社分割手続とは別途、資本金・資本剰余金・利益剰余金の減少手続を要するということを注意的に規定している。 |
その他