今ある会社の上に持株会社(ホールディングス)を作りたい。
今ある会社を別会社の持株会社(ホールディングス)にしたい。
他の企業を現金なしに買収したい。
そんなとき「株式移転」「株式交換」を利用できます。
もくじ | |
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いずれも親子関係会社を作るためのスキームです。
違いは、下表のとおり。
株式移転 | 株式交換 | |
共通点 |
完全親子会社の関係が誕生する。 子会社株主が親会社株主になる。 |
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概要 | 会社が自社の親会社になる会社を新しく設立し、親会社は、その設立登記の日に、子会社の発行済株式全部を取得する(会774) |
会社がその発行済株式全部を既存の他の会社に取得させること。 子会社の元株主は、親会社の株式を(子会社株式と)交換でもらう。【0】 現金を用意しなくても買収できるメリットがある。 |
親会社 |
〇 新たに設立するのは株式会社 × 合同会社はダメ |
〇 既存の株式会社 〇 既存の合同会社 |
効力発生 | 親会社の設立登記の日 | 株式交換契約で定めた株式交換の日 |
手続 |
1.株式移転計画、親会社定款作成(会772Ⅰ)
⑵ 株券提供(会219Ⅰ⑧)【2】 7.事後開示書面備置(子会社:会811Ⅱ、親会社:会815Ⅲ)
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1.取締役会決議 2.株式交換契約締結(会767、768) 3.事前開示書面備置(会782、794) 4.株主総会承認(会783、795) 5.反対株主への対応(会785、797) 6.各種公告 ⑴ 債権者保護(子会社:会789、親会社:会799) 【1-2】 ⑵ 株券提供(会219Ⅰ⑦)【2】 7.効力発生・登記【3】 8.事後開示書面備置(子会社:会791、親会社:会801) |
略式手続 |
× 不可 ∵ 親会社となる会社が不存在のため、株式を持たれているという概念が生じ得ない。 |
〇 当事会社のうち90%以上の議決権を保有されている会社においては、株主総会省略可能【4】。 ∵ 承認されるに決まっているから |
簡易手続 |
× 不可 ∵ 親会社がないため |
〇 完全親会社は、交付する財産の金額が純資産額の1/5以下である場合に簡易株式交換に該当し、株主総会決議を省略できる。 ∵ 親会社の規模からすれば小規模な株式交換だから |
利用目的 |
〇 持株会社(ホールディングス)設立 〇 買収(M&A)される前提で株主を一人にする手段として |
〇 既存会社を持株会社(ホールディングス)にする。 〇 他企業の買収(M&A) |
司法書士報酬 |
関連会社1社につき11万円(税込)~ 【6】 |
関連会社1社につき16.5万円(税込)~ 【6】 |
実費 |
登録免許税 公告費用 |
登録免許税 公告費用 |
【0】対価は必ずしも、親会社株式とは限りません。金銭や持分など。
【1-1】次の場合、債権者保護手続が必要です。
•完全親会社が完全子会社の新株予約権付社債を承継したとき→子会社において必要。
【1-2】次の場合、債権者保護手続が必要です。
•完全子会社の株主に対する株式交換の対価が株式以外のとき(株式交換をする場合において、株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等が株式交換完全親株式会社の株式その他これに準ずるものとして法務省令で定めるもののみである場合以外の場合又は第768条第1項第4号ハに規定する場合)→親会社において必要。
•完全親会社が完全子会社の新株予約権付社債を承継したとき→親会社・子会社において必要。
【2】株券発行会社の場合、株券提供公告が必要です。
【3】株式交換の効力発生に伴い、資本金や発行可能株式総数が変更するときのみ
【4】略式手続の例外(株主総会決議を省略できない。)
①子会社が完全子会社になる場合でその子会社が公開会社であり、その株主に対し譲渡制限株式が交付される場合
②子会社が完全親会社となる場合でその子会社が全株式譲渡制限会社であって株式の交付を行う場合
【5】簡易手続の例外(株主総会決議を省略できない。)
①反対株主が完全親会社の総株式数の6分の1を超えた場合
②完全親会社が譲渡制限会社であり譲渡制限株式を割り当てる場合
【6】司法書士報酬・関連会社1社につきの例
関連する会社数 | 司法書士報酬 | |
子会社1社が親会社を設立する株式移転 | 2社 | 220,000円(税込)~ |
2社が共同して親会社を設立する株式移転 | 3社 | 330,000円(税込)~ |
1社が別会社の子会社になる株式交換 | 2社 | 330,000円(税込)~ |
2社が別会社の子会社になる株式交換 | 3社 | 495,000円(税込)~ |
独禁法や金商法の適用のない株式移転手続は次のとおりです。
最寄りの当グループ事務所にご予約ください。
最終的に、どのような形になることをご希望されているのか? 詳細にご要望をおうかがいします。
株式移転により設立される親会社の内容、子会社株主に交付する金銭など、効力発生日(親会社設立日)【1】などを記載した計画を作成します(会772Ⅰ)。
取締役会設置会社の場合、取締役会の決議が必要です(会362Ⅳ)。
【1】効力発生日の設定について
株式移転計画、移転対価の相当性、債務の履行に関する事項などを記載した書面を本店に備置き、株主や会社債権者の閲覧させます(会803)。
備置開始時期は、次の3つのうち一番早い日(①総会2週間前、②反対株主へ株式移転が承認された旨を通知する日、③新株予約権買取請求権者への株式移転が承認された旨を通知する日)
備置終了時期は、親会社の設立登記の日から6か月
原則として、特別決議で承認します。
適法に買取り請求権を行使した株主や新株予約権者がいる場合、対応します(会806Ⅰ)。
必要に応じて、
新株予約権付社債がある場合☛債権者に対する通知・公告(会810)
子会社が株券を実際に発行している場合☛株券提出手続(会219)
完全親会社の設立登記を申請します。
完全子会社についての登記は、原則不要です。例外:子会社の新株予約権者に対して、親会社の新株予約権が交付される場合にのみ子会社の新株予約権の消滅登記を申請します。
設立登記を申請した日が、親会社の設立日(誕生日)になります。
設立登記の日から6か月間、一定の事項を記載した書面を本店に備え置いて、株主及び会社債権者の閲覧に提供します(会811Ⅱ、815Ⅲ③)
貸借対照表に変動ありません。
株式移転により設立される親会社の貸借対照表は次のとおりになります。
資産の部=子会社株式のみ
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負債の部=なし |
純資産の部=資本金+資本剰余金+利益剰余金 【1】 |
【1】純資産の部の振分けルール
株主資本変動額【2】が プラスのとき |
資本金 資本剰余金 資本準備金 その他資本剰余金 |
△ 株主資本変動額【2】の範囲で振分け自由 ▽ |
利益剰余金 |
0円 | |
株主資本変動額【2】が マイナスのとき |
資本金 資本剰余金 資本準備金 その他資本剰余金 利益剰余金 利益準備金 その他利益剰余金 |
0円 0円 0円 0円 0円 0円 ▲株主資本変動額【2】 |
【2】株主資本変動額とは
会計処理上の分類 |
株主資本変動額 | |||
単独株式移転 | 共通支配下の取引 | 簿価純資産額 | 52Ⅰ③ | |
共同株式移転 | 取得 | 取得企業 | 簿価純資産額 | 52Ⅰ③ |
被取得企業 | 対価時価 | 52Ⅰ① | ||
共通支配下の取引等 | 共通支配下の取引 | 簿価純資産額 | 52Ⅰ② | |
非支配株主との取引 | 対価時価 |
52Ⅰ②かっこ書 |
||
共同支配企業の形成 | 簿価純資産額 | 52Ⅰ③ |
参考:田中亘・秋坂朝則監修/改正会社法対応版「会社法関係法務省令(会社法施行規則/会社計算規則/電子公告規則)逐条実務詳解/清文社/2016/799p以下
オーソドックな株式移転(株券を発行しておらず、新株予約権を発行しておらず、株主が株式移転に反対しない場合)の所要時間は、概ね次のとおりです。
手続 | 所要時間 |
打合わせ~書類作成 | 2週間 |
取締役会招集~取締役会開催 | 0~1週間 |
株主総会招集~株主総会開催 | 2週間 |
登記申請~登記完了 | 3週間 |
合計 | 2か月 |
関連する会社数 | 司法書士報酬 | 実費 | |
子会社1社が親会社を設立する株式移転 | 2社 | 220,000円(税込)~ | 160,000円【1】 |
2社が共同して親会社を設立する株式移転 | 3社 | 330,000円(税込)~ | 160,000円【1】 |
1社が別会社の子会社になる株式交換 | 2社 | 330,000円(税込)~ |
【2】【3】 |
2社が別会社の子会社になる株式交換 | 3社 | 495,000円(税込)~ |
【2】【3】 |
【1】株式移転による会社設立の場合、登録免許税は(資本金の額×7/1000。この額が15万円に満たない場合には15万円)です。
債権者保護手続を要さない場合かつ、子会社が新株予約権を発行していない場合の実費合計です。
【2】交換契約書の印紙税について
┌株式の交付のみを記載している場合:不課税文書で、印紙を貼る必要はありません。
└社債などの移転をも記載している場合:課税文書になります。
【3】株式交換と会社登記の要否は次のとおりです。
また、例外(会社登記が必要)に該当する場合には、所定の司法書士報酬が加算されます。
原則 | 会社登記は不要 |
例外① |
親会社が、株式の新株発行を行なう場合 ☛親会社で増資登記が必要で、登録免許税は増加資本金×7/1000(最低額3万円) |
例外② |
子会社が、新株予約権を発行していた場合 ☛新株予約権を抹消しておかないと、将来、新株予約権が行使されると株主が生まれ、 完全子会社ではなくなってしまうため、子会社の新株予約権の抹消登記が必要。 ☛子会社で登記が必要で、登録免許税は3万円 |
例外③ |
子会社に新株予約権付社債権者がいて、親会社がこれを承継する場合 ☛親子会社双方において債権者保護手続き(官報公告)が必要。 ☛親会社において、新株予約権の発行登記が必要で、登録免許税は9万円。 ☛子会社において、新株予約権付社債の抹消登記が必要で、登録免許税は3万円。 |
例外④ |
子会社の株主に対する株式交換対価が株式以外の場合 ☛親会社は資金の流出があるので債権者保護手続き(官報公告)が必要。 ☛親子会社双方において、会社登記は不要。 |
例外⑤ |
株券発行会社の場合 ☛株券不発行会社への移行登記を前提として行なう場合には、登録免許税は3万円。 ☛株券発行会社のまま株式交換を行なう場合には、株券提供公告が必要。 |
その他