スタートアップの資本政策❷資本政策の作り方と投資の受入れ


スタートアップの資本政策「総論」をご覧いただいたスタートアップ経営者の方に、このコラムでは、次の段階、より具体的な「資本政策の作り方」と「投資を受け入れるまでの具体的な流れ」についてお話ししたいと思います。

もくじ
  1. 資本政策の作り方
  2. 投資を受け入れるまでの具体的な流れ

資本政策の作り方


事業計画を作成する。

投資家からお金を出してもらうのですから、貴社はまず投資家に対して「お金を何に使うことによって、どう成長をし、投資家にいつ・どれくらいの金額を儲けさせることができるか」を説明し、納得してもらう必要があります。

この「お金を何に使うことによって、どう成長をし、投資家にいつ・どれくらいの金額を儲けさせることができるか」を表にしたものが事業計画だと考えていただければ結構です。

資本政策を作成する。

●必要な資金をすべて株式(エクイティ・ファイナンス)で調達すると、創業者の持株比率が希薄化してしまいます。

そこで、最初期の資金としては、次のものも検討します。

  • 返済が不要な補助金・助成金
  • クラウド・ファンディング
  • 日本政策金融公庫からの借入(デットファイナンス)

これらをバランス良く使いこなすことが重要です。

 

●どれくらいの資金を集めれば良いのか

「どれくらいの資金を集めれば良いのか」については、現在の預金残高から毎月の出費を引き算していき、資金がゼロになるまでに最低でも1年半~2年以上分の資金を確保する必要があります。(スタートアップの法律相談/青林書院/59頁)

 (預金残高+調達資金)÷毎月の出費=18か月~24か月

となる必要があります。

投資を受け入れるまでの具体的な流れ


資本政策ができたら、次はいよいよ投資を受けます。

今ラウンドでの調達内容を検討する。

  希望バリュエーション 調達方法 調達時期

シード期

アーリー期

需要と共有のバランス、VC等との交渉で決定され、明確なロジックはありません。 みなし優先株かJ-KISSか ピッチから着金まで3か月

ミドル期

レイター期

上場が近いため、類似企業比較法など種々の計算方法があります。 優先株 ピッチから着金まで6か月

リード投資家を選定する。

リード投資家とは、資金調達において、中心的な役割(スタートアップとの条件交渉、必要に応じてデューデリジェンスなど)を担う投資家のことです。

自社の事業ドメイン、事業ステージに応じたVCや担当者をリスト化します(リストから選びます。)。

  • そもそもフォロー投資が専門で、リード投資しない投資家に接触しても無意味です。
  • ファンド設立時期も重要です。ファンドは大抵7~10年満期で設立されています。ファンドは満期時に解散してしまいますので、スタートアップとしては満期時にエクジットできる設計をしなければ投資を受けることはできません。
  • フォローオン(追加投資)をしてくれるVCかも重要です。
  • 支援スタイル(ハンズオン、ハンズオフ、ハンズイフ)も大切です。
  • CVC(事業会社が設立したVC)の場合には、事業上のシナジー効果を検討提案する必要もあるでしょう。

VC、CVCの特長については記事「投資家の種類」も参照ください。

アポ、プレゼン、NDA

選定したリード投資家候補へアポをとり、プレゼンをします。

スタートアップは、投資家に詳細資料を開示する前には必ず秘密保持契約書(NDA)を締結するように求めましょう。資料開示後、投資家の親会社が、資料を参考に同種事業を開始するのを阻止する必要があるためです。

リード投資家から「タームシート」を提出してもらいます

下記のような投資条件が記載された「タームシート」を期限を切って提示してもらいます。

  • バリュエーション
  • 出資金額
  • 株式の種類(優先株なら優先倍率等も)
  • 投資条件(合計でいくら以上調達が必要か)
  • 投資契約、株主間契約の概要

リード投資家の決定。

リード投資家のDDを受け入れ、リード投資家が投資する決定をした場合には、次のように進みます。

契約交渉

契約では、スタートアップ側、投資家側いずれが用意した契約書(雛形)を使うか(いわゆる「雛形の戦い」)も協議します。

フォロー投資家を決定する。

フォロー投資家は、リードとスタートアップが締結した契約内容に乗ることができるか否かを決定します。

デューデリジェンスを受け入れる。

クロージング(資金受入れ)する。