お商売を始めるときは、「個人事業」から始めることも、「会社や法人を設立して」始めることも、どちらも可能です。
また「個人事業」としてスタートした後で「会社や法人」を設立することも可能です。
ビジネスを始めるあなたが➊個人事業として始めるか、➋会社法人を作って始めるかを選択するヒントになれば幸いです。
もくじ | |
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個人事業主と法人の違いをご説明する前に「法人」とは何なのか、サラッとご説明したいと思います。
私たち「ヒト」は出生(出産)によって、その名前で権利を得る(物を買って自分の物にする)ことができるようになり、義務を負担する(お金を支払う)ことができる(権利義務の主体となる)ようになります。
「法人」も「法の人」と書き表されるように、法によって「人」として認められ、法人の名前で権利や義務の主体となることができます。
ところが「ヒト」は目に見えますが、「法人」は目で見ることができません。立派な本社ビルを建てたら目に見えますが、それは本社ビルという「不動産」が見えているだけで「法人そのもの」が見えるわけではありません。
目に見えない「法人」を権利義務の主体とするからには、目に見えるものが必要です。その目に見えるものが「会社・法人の登記」であり、法人を作って開業するためには「その会社法人の登記をすること」が必要とされています。
そして「法人を作る」プロが、私たち司法書士です。
会社と法人の何が違うかといいますと、単に種類の違いです。
(広義の) 法人 |
会社 | 営利法人である株式会社・合同会社・有限会社などを意味します。 |
(狭義の) 法人 |
非営利法人である一般社団法人・NPO法人などを意味します。 |
個人で開業するか、法人を設立して開業するかの法制度上の違いは、下表のとおりです。
もっとも個人で開業して後日法人化すること(「法人成り」といわれます。)も良くあります。
いきなり法人を設立して開業するよりも、個人で開業して何処かのタイミングで法人化(法人成り)を検討する方が、リスクは低いといえるかもしれません。
個人事業主 | 会社や法人 | ||
開業 | 事業開始 | 税務署に「開業届」を提出する。 |
法務局に「会社法人の設立登記」を申請する。 税務署に「法人設立届出」を提出する。 |
開業 | ○個人でもできる。 |
×複雑なので通常は司法書士に依頼 |
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開業の手続費用 | 0円 | 数十万円 | |
負担 | 日常的な税金 | 所得税 | 法人税 |
個人住民税 | 法人住民税 | ||
個人事業税 | 法人事業税 | ||
消費税 | 消費税 | ||
税務申告 |
〇個人でもできる(税理士に依頼することを推奨)。 |
△複雑なので通常は税理士に依頼 |
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社会保険 |
○加入義務なし(5人未満のとき) ○従業員分を事業主負担なし |
×加入義務あり ×従業員分の会社負担分があり。 |
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事業で失敗をしたときの責任 | ×無限責任 |
○株式会社などは出資額を限度とする有限責任(社長個人の保証債務は除く) ×士業法人など法人の種類によっては無限責任
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社会的信用 |
△法人ほど高くない △集客で不利かもしれない。
△求人で不利かもしれない。 |
○高い ○集客で有利かもしれない。
○求人で有利かもしれない。 |
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その他 | 契約 |
△代表者個人としての契約になる。 屋号など肩書きを入れることができる場合もある。例「あなまち司法書士事務所代表佐藤大輔」 |
〇法人名で契約できる |
登記や登録 |
×不動産や動産(自動車など)は、事業用であっても、代表者個人名でしか登記登録できない。 ×個人資産か事業用資産か区別できない |
○不動産や動産を登記・登録するときには、法人名で登記できる。 |
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事業の廃止 | ○税務署に「廃業届」を提出する。 |
×法務局に「会社法人の解散登記」を申請する。 ×法務局に「会社法人の清算結了登記」を申請する。 |
お商売を始めると、最初は経費ばかり掛かって、売上が立たないので「赤字」ということも多いでしょう。
サラリーマンとして働きながら、「個人事業」として起業すると、個人の所得にかかる所得税は「総合課税」ですので、「サラリーマンの給与所得」を「赤字の事業所得」を損益通算することも可能です。
この観点からすると、サラリーマンのうちに「個人事業」として起業して「総合課税」の恩恵を受けながらビジネスを収益化するのも良さそうです。
これまで多くの法人代表者の方とお話をしてきましたが・・・
法人化があまり意味の無い事業
これらの事業の場合、法人化するか否かは「社会保険料の負担」と「法人化によって得られる信用」のどちらを採るかというところに要約されます。
法人化しないと始まらない事業