保育所・幼稚園・認定こども園を作りたい


子どもに関わる仕事をしたいというとき、まず思い浮かべるのは保育所・幼稚園経営だと思います。

しかしながら、小さな子どもたちの保育、教育には多くの人員を配置しなければならず、保護者から支払われる保育料だけでは、保育所・幼稚園の経営は大変です。そこで、保育所・幼稚園は、行政から財政的支援(給付)を受けて経営していくことになります。

したがって、保育所・幼稚園を経営なさろうとする場合には、まず、行政からの財政的支援を確実に受け取ることができるよう設計しなければなりません。

もくじ
  1. 保育所・幼稚園・認定こども園とは
    1. 認定こども園にも4種類ある
    2. さらに小規模な「地域型保育事業」とは
    3. まだ他にもある幼保事業
  2. 幼保施設に対する行政の助成・補助・給付金
    1. 保育所・幼稚園・認定こども園に対する「施設型給付」(助成金)の概要
    2. 地域型保育事業に対する「地域型保育給付」(助成金)の概要
    3. その他の施設への様々な助成
  3. どの幼保施設を作るか(その1:法人)
    1. すでに「学校法人」である場合
    2. すでに「社会福祉法人」である場合
    3. ゼロから幼保施設を作ろうとする場合
    4. 幼保施設の運営主体として法人は必要か
    5. 後継者がいない事業所をM&Aで取得する
  4. どの幼保施設を作るか(その2:人)
  5. どの幼保施設を作るか(その3:不動産)
  6. 幼保施設開業までの流れ
  7. 多くの専門家・士業の関与が必要不可欠
  8. 司法書士の報酬・費用

〔凡例〕当記事では、下記のとおり略記します。

児法:児童福祉法

児令:児童福祉法施行令

児規則:児童福祉法施行規則

児童施設基準:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準

学法:学校教育法

学令:学校教育法施行令

学規則:学校教育法施行規則

幼稚園基準:幼稚園設置基準

認定こども園法:就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律

子ども・子育て支援法

保育所・幼稚園・認定こども園とは?!


まず、施設にはどんな種類があるのかご確認ください。

ちなみに「保育『園』」という俗称を使われることがあっても、法律上は「保育『所』」が正確です。この記事では「保育所」と記載しています。

  保育所 幼稚園 認定こども園
所管 厚生労働省 文部科学省 内閣府(厚労省・文科省と連携)
根拠法 児童福祉法(に基づく児童福祉施設) 学校教育法(に基づく学校) 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律

設置

主体

国、都道府県、市町村、

社会福祉法人、学校法人ほか(児法35)

 

国、自治体、学校法人

(学法2)

  • 幼保連携型認定こども園は、国、地方公共団体、学校法人及び社会福祉法人のみが設置できる(認定こども園法12)
  • 幼保連携型認定こども園以外の認定こども園は、制限なし
目的 保護者の就労等、長時間の保育を必要とする場合に、子どもの生活リズムに沿った保育を提供する。 施設での教育と家庭での子育てがバランス良く行えるようにする。 保護者の就労の有無にかかわらず、同じ施設に子どもを預けられる。
対象

0~5歳

3~5歳(学校教育法26) 0~5歳

・保育時間

8時間/日が原則(児法34)

夜間保育を実施する施設もある。

土曜日も保育がある。

原則として夏休み等の長期の休みはない。

4時間/日が標準。

預り保育を実施することで長時間保育を実施する施設もある。

4時間~8時間/日

規定なし

39週以上(学規則37)

入所児童に応じて施設で決定する。

教員

保育士

幼稚園教諭

0~2歳児:保育士資格

3~5歳児:両資格併有

一学級当たり乳幼児数/学級編成基準なし。

一保育士当たりの乳幼児数の制限は・・・

  • 乳児:3人毎保育士一人
  • 1歳以上3歳未満:6人毎
  • 3歳以上4歳未満:20人毎
  • 4歳以上:30人毎

(児童福祉施設最低基準33Ⅱ)

一学級当たり乳幼児数/設置基準35人以下が原則。

0~2歳児:保育所同様

3~5歳児:20~30人に一人

保育料

保護者の所得に応じて市町村長が決定し、保育料は市町村に納付する。

設置者が決定するため金額はバラバラ。

保育料は幼稚園に納付する。

設置者が決定する。

認可外施設

保護者のニーズに対応するため、意図的に認可を受けていない施設もある。 幼稚園という名称は使用できない(学法135Ⅰ) 認定こども園という名称は使用できない(認定こども園法31)

認定こども園にも4種類ある

「認定こども園」の中にも、実は4種類あります。

さらに小規模な「地域型保育事業」とは?!

うえに挙げた保育所・幼稚園・こども園以外にも、もっと小規模な事業もあります。

市町村が認可する「地域型保育事業」といわれるものです。

いずれも「原則0~2歳児」を対象とした事業です。

類型 事業主体 保育実施場所等 認可定員
小規模保育事業

市町村

民間事業者等 

保育者の居宅

その他の場所・施設

0~2歳

6-19人

家庭的保育事業

市町村

民間事業者等

保育者の居宅

その他の場所・施設

0~2歳

1-5人

事業所内保育事業 事業主等

事業所の従業員の子ども+

地域の保育を必要とする子ども(地域枠)

0~2歳

 

居宅訪問型保育事業

市町村

民間事業者等

保育を必要とする子どもの居宅

0~2歳

 

まだある幼保事業

類型 概要
企業主導型保育
  • 企業が事業主体となります。【1】
  • 企業の従業員の子ども+地域の保育を必要とする子ども(地域枠)
  • 受け入れる子どもさんの年齢制限はありません。
  • 都道府県への届出が必要です。
一時預かり、一時保育
  • 都道府県への届出が必要です。
放課後児童クラブ 
  • 子どもが小一に上がると、それまでは受けられていた支援(長時間預かってくれる保育所が使えなくなる。時短勤務が不可になる等)がなくなり、育児と仕事の両立が難しくなる「小一の壁」打開に向け設けられた。
  • 受け入れる子どもは小学生がメインです。
  • 市町村への届出が必要です。

【1】複数の企業での共同利用も可能

幼保施設に対する行政の助成・補助・給付金


  • 保育所
  • 幼稚園
  • 認定こども園
    • 幼保連携型認定こども園
    • 幼稚園型認定こども園
    • 保育所型認定こども園
    • 地域裁量型認定こども園
施設型給付【1】
     

  • 小規模保育事業
  • 家庭的保育事業
  • 事業所内保育事業
  • 居宅訪問型保育事業
→  地域型保育給付【1】
       

その他

  • 認可外保育施設
    • 企業主導型保育
  • 一時預かり、一時保育(都道府県への届出)
  • 放課後児童クラブ、学童保育、学童クラブ
様々な助成【2】

【1】保育所・幼稚園・認定こども園に対する施設型給付の概要

【1】地域型保育事業に対する地域型保育給付の概要

いずれの給付でも、

  1. 行政が幼保施設に対して
  2. 「子ども一人あたりにかかる保育・教育費を基準により算定した額」ー「市町村が定める利用者負担額」

を給付します。

【2】その他の施設への様々な助成

  1. 企業主導型保育への助成については「企業主導型保育事業の制度の概要と企業のメリット/内閣府/最終アクセス220614」を参照ください。子育て安心プラン等で掲げた「定員11万人分の受け皿確保」をおおむね達成したため、令和4年度の新規募集はない模様です。
  2. 一時預かり事業への助成については、各市町村が実施しています。
  3. 放課後児童クラブへの助成については、各市町村が主に低所得者層のために実施しています。

どの幼保施設を作るか?!(法人)


ハードルが高いもの

幼稚園/幼稚園型認定こども園・・・設置主体が「学校法人」のみ

保育所/幼保連携型認定こども園・・・設置主体が「学校法人」「社会福祉法人」ほか

保育所型認定こども園/地方裁量型認定こども園・・・設置主体に「制限なし」 

ハードルがそれほど高くないもの

すでに「学校法人」である場合

  • 幼稚園/幼稚園型認定こども園
  • 保育所/幼保連携型認定こども園
  • 保育所型認定こども園/地方裁量型認定こども園

いずれの施設も設置可能です。

すでに「社会福祉法人」である場合

  • 保育所/幼保連携型認定こども園
  • 保育所型認定こども園/地方裁量型認定こども園

が設置可能です。

  • 幼稚園/幼稚園型認定こども園

は設置できません。幼稚園は設置主体が「学校法人」であることが必要だからです。

ゼロから幼保施設を作ろうとする場合

  • 保育所/幼保連携型認定こども園
  • 保育所型認定こども園/地方裁量型認定こども園

が設置可能です。

  • 幼稚園/幼稚園型認定こども園

は設置できません。幼稚園は設置主体が「学校法人」であることが必要だからです。

幼保施設の運営主体として法人は必要か?!

作ろうとするのが、保育所/幼保連携型/保育所型/地方裁量型の場合には、必ずしも法人を設立する必要はありませんが、行政からの施設型給付を受けるためには法人である必要があります。

法人の設立には、その種類によってハードルの高低があります。例えば営利法人である株式会社、合同会社や、非営利法人であっても一般社団法人はハードルが高くありません。

一方、公共性・公益性が高い法人に成ればなるほど、そのハードルは高くなります。

「学校法人」「社会福祉法人」「NPO法人」等を設立しようとすると、法人に関わる人数が多いなど高いハードルがあります。その点「一般社団法人」は設立や維持が、比較的容易ですので、検討しましょう。

後継者がいない幼保施設をM&Aで取得する

M&Aで買い取る場合には、

  • 幼保施設だけを買い取る「事業譲渡」「会社分割譲渡」という方法
  • 幼保施設を運営している法人ごと買い取る「株式譲渡」等という方法

があります。

 

買い手のメリットは、次のようなものがあります。

  • 有資格者を一括で確保できる。
  • 幼保施設の土地・建物を一括で取得できる。
  • 子どもたち(顧客)をそのまま引継ぎできる。
  • 時間を節約できる。

もっともM&Aには、デメリットもありますので、良いことしか言わないM&A仲介会社の言葉を信じず、買収側で専門家を雇って調査する(デューデリジェンス)ことが必要です。

どの幼保施設を作るか?!(人)


それぞれの幼保施設によって、確保すべき有資格者の種類と人数が異なります。

現在、幼稚園教諭、保育士ともに不足している状況にありますので、所定人数を確保できるようにする必要があります。

福利厚生の設計などに社会保険労務士が必要なときがあります。

どの幼保施設を作るか?!(土地・建物)


子どもたちが幼保施設で安全に過ごすことができるように、次のような厳しい要件が課されています。

  • 子ども一人当たり最低限必要な面積が定められています。
  • 医務室、調理室、トイレ、屋外遊戯場、緊急避難用設備などの設置が義務づけられています。
  • 送迎時のラッシュで近隣とのトラブルを発生させないために駐輪場、駐車場の設置も必要です。
  • 周辺に風俗営業(スナック・キャバクラ・クラブ・ラウンジ、低照度飲食店、ネットカフェ、まあじゃん屋、ぱちんこ屋、ゲームセンターなど)を営んでいる事業者がいないかもトラブルにならないために調査しておく必要があります。
  • 地域にどんな方が住んでいるか?幼保施設の開業では多少の音が発生してしまいます。住民がこれを許容してくれる方々であるか。
  • 農地である場合には、転用が可能であるか確認が必要です。
  • 保育事業に提供する不動産は、抵当権の設定が制限されていますので、融資ではなく、現金で用地買収をする必要もあります。

これらをクリアするために必要な専門家は、建築士、行政書士、土地家屋調査士です。

幼保施設開業までの流れ


公募を調査

幼保施設が不足している場合、地方公共団体が幼保施設を誘致するため、公募を行っていることがあります。「公募している=不足している」ということですので、チャンスです。

市町村、都道府県などと事前相談、協議

不動産探し

幼保施設を建てるのにふさわしい不動産を探します。不動産会社(宅建業者)が担当します。

(農地である場合)農地転用の許可

農地である場合には、農地以外に地目を変更する許可が必要です。行政書士が担当します。

農地法の許可を得たあとには、登記簿を農地から変更する必要があります。これは土地家屋調査士が担当します。

不動産(土地)の購入

不動産売買契約書や重要事項説明書の作成は、不動産会社(宅建業者)が担当します。

不動産購入の登記は、司法書士が担当します。

建物の建築や改装

建築士に幼保施設の要件を充たした建物の設計をしてもらい建築確認申請をしてもらいます。

居宅を改装して施設にする場合などには建物の種類変更も必要ですが、これは土地家屋調査士が担当します。

市町村、都道府県などとの協議

地域住民への説明会

幼保施設設置の認可申請

(必要に応じて)法人の設立認可申請

運営主体として「学校法人」「社会福祉法人」「NPO法人」などを選択した場合には、法人設立の認可が必要です。行政書士が担当します。

(必要に応じて)法人の設立認可

(必要に応じて)法人の設立登記申請

法務局に法人設立登記を申請します。司法書士が担当します。

(必要に応じて)法人への不動産などの移転登記申請

個人で取得していた不動産を法人設立後、法人へ所有権移転登記を行います。司法書士が担当します。

多くの専門家・士業の関与が必要不可欠


「幼保施設開業までの流れ」でご確認いただいたように、幼保施設の開業のためには、多くの専門家士業の関与が必要不可欠です。

 

しかしながら、

  1. 多くの専門家を選ぶのは、大変なお手間です。
  2. 多くの専門家からそれぞれ打合せを求められると大変です。
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司法書士の報酬・費用


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