子どもに関わる仕事をしたいというとき、まず思い浮かべるのは保育所・幼稚園経営だと思います。
しかしながら、小さな子どもたちの保育、教育には多くの人員を配置しなければならず、保護者から支払われる保育料だけでは、保育所・幼稚園の経営は大変です。そこで、保育所・幼稚園は、行政から財政的支援(給付)を受けて経営していくことになります。
したがって、保育所・幼稚園を経営なさろうとする場合には、まず、行政からの財政的支援を確実に受け取ることができるよう設計しなければなりません。
もくじ | |
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〔凡例〕当記事では、下記のとおり略記します。
児法:児童福祉法
児令:児童福祉法施行令
児規則:児童福祉法施行規則
児童施設基準:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準
学法:学校教育法
学令:学校教育法施行令
学規則:学校教育法施行規則
幼稚園基準:幼稚園設置基準
認定こども園法:就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律
子ども・子育て支援法
まず、施設にはどんな種類があるのかご確認ください。
ちなみに「保育『園』」という俗称を使われることがあっても、法律上は「保育『所』」が正確です。この記事では「保育所」と記載しています。
保育所 | 幼稚園 | 認定こども園 | |
所管 | 厚生労働省 | 文部科学省 | 内閣府(厚労省・文科省と連携) |
根拠法 | 児童福祉法(に基づく児童福祉施設) | 学校教育法(に基づく学校) | 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律 |
設置 主体 |
国、都道府県、市町村、 社会福祉法人、学校法人ほか(児法35)
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国、自治体、学校法人 (学法2) |
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目的 | 保護者の就労等、長時間の保育を必要とする場合に、子どもの生活リズムに沿った保育を提供する。 | 施設での教育と家庭での子育てがバランス良く行えるようにする。 | 保護者の就労の有無にかかわらず、同じ施設に子どもを預けられる。 |
対象 |
0~5歳 |
3~5歳(学校教育法26) | 0~5歳 |
教 育 ・保育時間 |
8時間/日が原則(児法34) 夜間保育を実施する施設もある。 土曜日も保育がある。 原則として夏休み等の長期の休みはない。 |
4時間/日が標準。 預り保育を実施することで長時間保育を実施する施設もある。 |
4時間~8時間/日 |
年 間 日 数 |
規定なし |
39週以上(学規則37) |
入所児童に応じて施設で決定する。 |
教員 |
保育士 |
幼稚園教諭 |
0~2歳児:保育士資格 3~5歳児:両資格併有 |
幼 児 数 の 制 限 |
一学級当たり乳幼児数/学級編成基準なし。 一保育士当たりの乳幼児数の制限は・・・
(児童福祉施設最低基準33Ⅱ) |
一学級当たり乳幼児数/設置基準35人以下が原則。 |
0~2歳児:保育所同様 3~5歳児:20~30人に一人 |
保育料 |
保護者の所得に応じて市町村長が決定し、保育料は市町村に納付する。 |
設置者が決定するため金額はバラバラ。 保育料は幼稚園に納付する。 |
設置者が決定する。 |
認可外施設 |
保護者のニーズに対応するため、意図的に認可を受けていない施設もある。 | 幼稚園という名称は使用できない(学法135Ⅰ) | 認定こども園という名称は使用できない(認定こども園法31) |
保育所と幼稚園と認定こども園との比較表/芦屋市こども政策課/最終アクセス220611を参照しました。
「認定こども園」の中にも、実は4種類あります。
子ども・子育て支援新制度ハンドブック・施設事業者向け(平成27年7月改訂版)/内閣府/最終アクセス220611より抜粋
うえに挙げた保育所・幼稚園・こども園以外にも、もっと小規模な事業もあります。
市町村が認可する「地域型保育事業」といわれるものです。
いずれも「原則0~2歳児」を対象とした事業です。
類型 | 事業主体 | 保育実施場所等 | 認可定員 |
小規模保育事業 |
市町村 民間事業者等 |
保育者の居宅 その他の場所・施設 |
0~2歳 6-19人 |
家庭的保育事業 |
市町村 民間事業者等 |
保育者の居宅 その他の場所・施設 |
0~2歳 1-5人 |
事業所内保育事業 | 事業主等 |
事業所の従業員の子ども+ 地域の保育を必要とする子ども(地域枠) |
0~2歳
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居宅訪問型保育事業 |
市町村 民間事業者等 |
保育を必要とする子どもの居宅 |
0~2歳
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類型 | 概要 |
企業主導型保育 |
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一時預かり、一時保育 |
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放課後児童クラブ |
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【1】複数の企業での共同利用も可能
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→ | 施設型給付【1】 | |
地 域 型 保 育 事 業 |
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→ | 地域型保育給付【1】 |
その他 |
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→ | 様々な助成【2】 |
いずれの給付でも、
を給付します。
ハードルが高いもの | |
幼稚園/幼稚園型認定こども園・・・設置主体が「学校法人」のみ ▲ 保育所/幼保連携型認定こども園・・・設置主体が「学校法人」「社会福祉法人」ほか ▼ 保育所型認定こども園/地方裁量型認定こども園・・・設置主体に「制限なし」 |
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ハードルがそれほど高くないもの |
いずれの施設も設置可能です。
が設置可能です。
は設置できません。幼稚園は設置主体が「学校法人」であることが必要だからです。
が設置可能です。
は設置できません。幼稚園は設置主体が「学校法人」であることが必要だからです。
作ろうとするのが、保育所/幼保連携型/保育所型/地方裁量型の場合には、必ずしも法人を設立する必要はありませんが、行政からの施設型給付を受けるためには法人である必要があります。
▼
法人の設立には、その種類によってハードルの高低があります。例えば営利法人である株式会社、合同会社や、非営利法人であっても一般社団法人はハードルが高くありません。
一方、公共性・公益性が高い法人に成ればなるほど、そのハードルは高くなります。
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「学校法人」「社会福祉法人」「NPO法人」等を設立しようとすると、法人に関わる人数が多いなど高いハードルがあります。その点「一般社団法人」は設立や維持が、比較的容易ですので、検討しましょう。
M&Aで買い取る場合には、
があります。
買い手のメリットは、次のようなものがあります。
もっともM&Aには、デメリットもありますので、良いことしか言わないM&A仲介会社の言葉を信じず、買収側で専門家を雇って調査する(デューデリジェンス)ことが必要です。
それぞれの幼保施設によって、確保すべき有資格者の種類と人数が異なります。
現在、幼稚園教諭、保育士ともに不足している状況にありますので、所定人数を確保できるようにする必要があります。
福利厚生の設計などに社会保険労務士が必要なときがあります。
子どもたちが幼保施設で安全に過ごすことができるように、次のような厳しい要件が課されています。
これらをクリアするために必要な専門家は、建築士、行政書士、土地家屋調査士です。
幼保施設が不足している場合、地方公共団体が幼保施設を誘致するため、公募を行っていることがあります。「公募している=不足している」ということですので、チャンスです。
幼保施設を建てるのにふさわしい不動産を探します。不動産会社(宅建業者)が担当します。
農地である場合には、農地以外に地目を変更する許可が必要です。行政書士が担当します。
農地法の許可を得たあとには、登記簿を農地から変更する必要があります。これは土地家屋調査士が担当します。
不動産売買契約書や重要事項説明書の作成は、不動産会社(宅建業者)が担当します。
不動産購入の登記は、司法書士が担当します。
建築士に幼保施設の要件を充たした建物の設計をしてもらい建築確認申請をしてもらいます。
居宅を改装して施設にする場合などには建物の種類変更も必要ですが、これは土地家屋調査士が担当します。
運営主体として「学校法人」「社会福祉法人」「NPO法人」などを選択した場合には、法人設立の認可が必要です。行政書士が担当します。
法務局に法人設立登記を申請します。司法書士が担当します。
個人で取得していた不動産を法人設立後、法人へ所有権移転登記を行います。司法書士が担当します。
「幼保施設開業までの流れ」でご確認いただいたように、幼保施設の開業のためには、多くの専門家士業の関与が必要不可欠です。
しかしながら、
そんなときには・・・
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私たちが顧問に就任して、開業まで伴走いたします。
業務の種類 | 司法書士の報酬 | 費用 |
司法書士顧問 | 月額55,000円(税込) | 交通費、郵送費 |
顧問契約の詳細につきましては、「司法書士による顧問契約のご紹介」をご参照ください。
また、保育士、幼稚園教諭の確保のためには「従業員支援プログラム」が有効かもしれませんので、あわせてご検討ください。