有限責任事業組合(LLP)と事業協同組合の違い


「有限責任事業組合(LLP)」とよく似た名前の「事業協同組合」という組合があります。

 

次のような方のお役に立てれば幸いです。

  • 有限責任事業組合(LLP)を設立しようとしていたけれど、事業協同組合の方がシックリ来るという方
  • 事業協同組合を設立しようとしたが、LLPの方が良いという方

有限責任事業組合(LLP)と事業協同組合の違い


有限責任事業組合とよく似た名前の組合に事業協同組合があります。

似て非なる両団体を比較すると次のとおりです。

大きな違いを太字で表示しています。

  有限責任事業組合 事業協同組合

有限責任事業組合契約に関する法律(以下「契約法」)

中小企業等協同組合法(以下「組合法」)

概要
  • 各組合員の長所を生かすために作る組合
  • 法人格はない(契約法1)
  • 特別な長所がない組合員でも結集して相互扶助の精神に基づき、協同して事業を行うことにより、中小事業者の①経営合理化、②取引条件の改善を図る組合。
  • 法人格がある(組合法4、3)
設立例

異業種で組むことが多い

  • ジョイントベンチャー
  • 産学連携(企業と大学の連携)
  • アニメ制作委員会

同業種で組むことが多い。

  • 卸売市場の仲卸組合
  • 旅館業協同組合

事業

内容

「非営利事業」を目的とできない。

 

次の業務は有限責任事業組合の事業とできない(法7Ⅰ)

  • いわゆる士業(法施行令1)
  • 宝くじ・競馬・競輪・競艇など(法施行令2)

 

「営利事業」を目的とできない。

 

組合員の事業を支援・助成するための事業ならばほとんどすべての事業を行える。

  • 共同生産・共同購入・共同販売・共同運送
  • 組合員への事業資金貸付
  • 新商品開発

など(組合法9の2)

 

共済事業:不可

商品券発行:不可

外国人技能実習生の受け入れ監理団体になること:不可

共済事業:可能(組合法9の6の2)

商品券発行:可能(組合法9の7)

外国人技能実習生の受け入れ監理団体になること:可能【1】

行政の

監督

行政の監督なし

次の監督を受ける

  1. 設立認可
  2. 事業年度ごとに決算関係書類提出
  3. 改善命令・解散命令
  4. 共済事業に関する監督
組合員 2名以上組合員必要【2】

4人以上組合員必要(組合法8Ⅰ)

相手方を選んで組合契約できる。

組合員の入れ替わりはあまり想定していない。

 

組合員の規模要件:なし【3】

地区制限:可能

加入制限:可能

組合員脱退の自由:原則なし(契約法25)

組合員の除名:可能(契約法26、27)

加入申込者が地区内の事業者である限り、来る者を拒めずの団体。組合員の入れ替わりを想定している。

組合員の規模要件:あり【4】

地区制限:可能

加入制限:禁止【5】

組合員脱退の自由:あり(組合法18)

組合員の除名:可能(組合法19)

組合員全員の出資義務:有(契約法3Ⅰ、24Ⅱ)

組合員全員の出資義務:有【6】

組合員は出資額限度の有限責任(契約法3Ⅰ)

組合員は出資額限度の有限責任(組合法10Ⅴ)

決定 業務執行の決定は、総組合員の同意。ただし、重要財産の処分・譲受、多額の借財以外の事項の決定については、組合契約書において総組合員の同意を要しない旨の定めをすることもできる(契約法12)。

総会における議決権は、各組合員の出資額の多少にかかわらず1人1票(組合法11)

機関

・役員

組合員が、直接的な業務執行権と業務執行義務を負う(契約法13)ので、理事や理事会は必要でない。

総会設置必要(組合法46)【7】

理事会設置必要(組合法36の5Ⅰ)

理事3名以上

監事1名以上

(参事≒会社でいう支配人)

(会計主任)

役員(理事など)がいないので、任期もない。

理事2年、監事4年、設立時役員1年(組合法36)

設立手続

一日で設立することも可能

 

組合契約書作成

出資金の払い込み

設立認可:不要

定款認証類似の認証:不要

登記:必要【8】

最低3か月~数か月を要する。

 

都道府県との事前調整

定款作成(組合法27Ⅰ)

創立総会開催の公告(組合法27Ⅱ)

創立総会開催(組合法27Ⅰ)

設立認可申請

▽2~3か月

認可書受領

発起人から理事へ事務の引継(組合法28)

出資の払込(組合法29)

▽2週間内

設立登記申請(組合法30)

設立費用

組合契約書印紙:不要

司法書士報酬:143,000円(税込)【9】

登録免許税:6万円

合計:22万円ほど

定款印紙:非課税【16】

設立認可報酬:385,000円(税込)【10】

設立認可実費:交通費郵券程度

司法書士報酬:110,000円(税込)【9】

登録免許税:非課税【11】

合計:56万円ほど

合併等

他の組合との合併:不可【12】

株式会社などへ組織変更:不可

分割により株式会社設立:不可

他の組合との合併:可能(組合法63)

株式会社などへ組織変更:可能【13】

分割により株式会社設立:可能【14】

税金 パススルー課税【15】

通常の法人(株式会社など)同様に法人に課税されますが、種々の減税免税があります【16】

【1】外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律2Ⅹ、同法23条以下

【2】組合員のうち1人は①国内に住所を有し、もしくは現在まで引き続き1年以上居所を有する個人か、②国内に本店もしくは主たる事務所を有する法人でなければならない(法3Ⅱ)。

日本で登記されていない外国会社も組合員となれる。

【3】LLPの組合員には、大企業であってもなることができます。

【4】小規模とは、下表の要件を充たす事業者です(契約法8Ⅰ)。要件を充たしていない大規模事業者を組合員に迎えることは可能ですが、その組合員加入から30日以内に公正取引委員会に届け出る必要があり、独禁法の適用がない組合かを公正取引委員会が判断します(契約法8Ⅱ、独禁法22)。

資本金・出資総額 原則(製造業など) 3億円を超えない
小売業 5000万円を超えない
サービス業 5000万円を超えない
卸売業 1億円を超えない
かつ 
常時雇用の従業員数 原則(製造業など) 300人を超えない
小売業 50人を超えない
サービス業 100人を超えない
卸売業 100人を超えない

【5】加入制限をすることが出来ません。組合員になる資格を有する事業者が組合に加入申請したときは、正当な理由なく、加入拒否することができません(組合法14)。また違反した法人役員は過料が課されます(法115Ⅰ⑧)。

【6】全組合員は少なくとも1口以上の出資義務を負う。また組合員1人の出資額が原則として総額の4分の1までに制限されています(組合法10)。

【7】総会にかえて、200人以上の組合員を有する事業協同組合は、定款に定めて総会に代わる総代会を設置できます(組合法55Ⅰ)

【8】構成員が無限責任を負う民法組合ではないということを外部に対抗するために「組合の登記」が必要です(法8)

【9】概ね1時間程度で打合せが完了する場合を想定しております。それ以上のご説明をご要望の場合や大規模な組合の場合には、別途お見積りをご用意いたします。

【10】設立認可の行政書士報酬は、次の前提条件です。

1.発起人4者が同業種であること

2.発起人4者の事業所が同一県内にあること

上記に該当しない場合は、それぞれ16.5万円(税込)ずつのプラスになります。 

【11】事業協同組合の法人登記の登録免許税は次のとおりです。

原則 設立・役員変更などほとんど全ての法人登記 非課税
例外

組織変更して株式会社・合同会社になる登記

分割により株式会社・合同会社を設立する登記

(登録免許税法17の2)

7/1000。但し、最低額は

株式会社設立:15万円

合同会社設立:6万円

【12】LLCとLLPの登記/福岡法務局商業・法人登記研究会編/日本加除出版/H19/299p

【13】中小企業団体の組織に関する法律100条の3

【14】登録免許税法17の2。ほかにもある筈が、未発見。

【15】パススルー課税とは、組合に利益が発生した段階では税金が課税されず、組合員に分配された段階で初めて参加企業の利益として税金が発生する。

【16】事業協同組合に対する減税・免税

税の種類 減税・免税などの内容(根拠条文)
法人税 税率の軽減(法人税法66Ⅲ)など
法人登記の登録免許税 【11】参照
不動産購入時など(不動産登記)の登録免許税 減免税はない模様
印紙税

設立時定款は非課税(印紙税額一覧表6号)

出資証券は非課税(印紙税額一覧表4号、印紙税法施行令25条)

組合・組合員間で交わされる受取書(印紙税額一覧表17号、基通(印)別表1-17号文書21)

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