自動車を人に貸す事業を始めたい方へ。
理解していただきたい項目をまとめましたので、ご参照ください。
もくじ | |
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自動車を人に渡して使わせる「お商売」では、大きく分けて、車を「貸す」と「売る」に分かれます。
車を貸すときは「リース」か「レンタル」になります。
車を売るときには、「現金一括」のお客様を除いて「ローン」「割賦販売」「所有権留保販売」の種類があり、これらを組み合わせることも良くあります。
さらに、契約当事者も、販売会社と顧客だけではなく、クレジット会社も登場することもあります。
別名 | 使用権 | 契約直後の所有権 | ||
車を貸す | リース契約 | (特になし) | 借りた人 | 貸す会社 |
レンタル契約 | 賃貸借契約 | 借りた人 | 貸す会社 | |
車を売る | ローン契約 | 金銭消費貸借契約 | 買った人 | 買った人 |
割賦販売 | 売買契約の一種で、売買代金を分割で払うことを認めたもの | 買った人 | 買った人 | |
所有権留保販売 | 売買契約の一種で、売買代金を完済するまでは所有権を販売会社に留保しておくもの | 買った人 | 販売会社 |
リース契約とレンタル(賃貸借)契約の違いは下表のとおりです。
違いは「➊維持管理費用を誰が負担するか」と「➋中途解約できるか」です。
契約書のタイトルよりも、この二点についてどういう契約になっているのか、契約書の中身(各条項)で判断することが大切です。
また、リースを提供する事業者は契約書タイトルと中身が矛盾しないように注意する必要があります。リースかレンタルか分からなければ、揉めるもとだからです。
リース契約 | レンタル(賃貸借)契約 | |
借主が欲しい物をリース会社に購入してもらって、リース会社から借りる | 賃貸人が最初から持っている物を借りる | |
契約期間 | 比較的長期 | 短期も長期もある |
所有権 | リース会社 | 貸主 |
使用権 | ユーザー | 借主 |
修繕維持管理 費用の負担者 |
ユーザー | 貸主 |
中途解約 |
中途解約不可【1】 残リース料・違約金を支払う |
解約予告のうえ中途解約可 違約金などは発生しない |
法律上の根拠 |
民法521:契約自由の原則【2】 |
民法601以下 借地借家法など |
【1】「リース会計基準」で、リース契約というためには「中途解約不可」とすることが要求されているためです。
【2】これまでの民法には「契約自由の原則」を定めた条文は有りませんでした。契約自由の原則とは、「契約内容は公の秩序(民90)や強行法規(民91)に反しない限り当事者間で自由に決められる」という原則のことを指していましたが、改正民法521条に明記されました。
反対語:物権法定主義
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どんな契約を結ぶかは当事者の自由(=契約自由の原則)ですので、リース会社は様々なリース商品を提供しています。貴社にとってどんなリースがお得なのか、良く考えて契約しましょう。
様々なリースを分類すると次ようなものになります。
リース契約 | |||
名称 | ファイナンス・リース | オペレーティング・リース | |
意義 | リース会社が物を購入してユーザーに貸与する。 | ファイナンス・リース以外のリースのこと | |
種類 | 所有権移転ファイナンス | 所有権移転外ファイナンス | |
効用 |
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リース契約は、物を使いたい事業者(ユーザー)にとっては、初期投資額を抑えることができるという大きなメリットがあります。
一方、リース契約は複雑で、十分に理解せぬまま契約するユーザーも存在します。あまりに自動車会社やリース会社にとって都合の良い契約を結んで、後日揉めないようにすることが大切です。
ユーザーが勘違いしやすい特徴は次のとおりですので、十分な説明のうえ、契約しましょう。
リース契約に特約があったとしても、特約はメーカーを拘束しない。
売買契約に特約があっても、特約はリース会社を拘束しない。
目的物に瑕疵があっても契約不適合責任をリース会社に追及できない。
物件価格に比べて、法外なリース料を設定するとトラブルが発生する元となります。
保守契約もセットで結ぶと、販売会社が保守を担当します。
保守契約もセットのリースを「メンテナンス・リース」と呼びます。
「リース会計基準」で、リース契約というためには「中途解約不可」とすることが要求されているためです。
安易に途中解約をされてしまうと、リース会社に損害が生じることも理由です。
通常のリース契約では、➊ユーザー、➋メーカーと➌リース会社の三者間で契約することとなりますので、契約締結までのフローも次の通り複雑です。
ユーザーとメーカーが決めた条件を引き継ぐ
道路運送法第80条第1項 | |||||
自家用自動車は、国土交通大臣の許可を受けなければ、業として有償で貸し渡してはならない。 | → | レンタカー | → | 国交大臣許可必要 | |
ただし、その借受人が当該自家用自動車の使用者である場合は、この限りでない。【1】 | → | カーリース | → | 借受人が「使用者である場合」許可不要【2】 | |
改正前の道路運送法第79条第1項には「自家用自動車を共同で使用しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。」という条文がありましたが、平成18年の改正により削除され、自家用自動車の共同使用には許可が不要になりました。 |
→ | カーシェア | → | 借受人が「共同使用者である場合」許可不要【3】 |
【1】「カーリース」事業であって、「レンタカー」事業ではないことを説明できないといけません。
ユーザーにちょっと貸すだけの「レンタカー」ではなく、ユーザーが恒常的に使用する「リース」であることを説明するためには車検証の使用者を「ユーザー名」で登録することが必要です。
【2】リース事業を行なうために特に許認可は必要ありません。
物を貸さないで資金融資を行なおうという場合には「融資」になりますので、貸金業の登録を行なう必要があり、これを行なわずに融資を行なうと「ヤミ金」になってしまいます(10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する:貸金業法47②)
【3】カーシェアをする人が、国土交通大臣の許可を不要とするためには「借受人も共同使用者といえる状態」にしなければなりません。
カーシェアをインターネット上で仲介する会社が行った法令適用事前確認手続(いわゆる「ノーアクションレター制度」)に対して、令和2年7月31日付で国土交通省は次のように回答しているのが参考になります。
「自動車を使用する」とは、自動車の管理も合わせて行うことを常態とするものであり、日常点検整備だけでなく、定期点検整備等も行うものである。 |
上記のような、法令の制限に該当しないように、例えば、カーシェアのプラットフォームである「Anyca(エニカ)」では次のような運用ポリシーを設けています。
Anycaには、あらゆるクルマが登録されていますが、メインとなる個人オーナー(法人含む)のシェアは「共同使用」という同一の自家用自動車を複数人で使用する形態の上で成り立っています。
レンタカー(有償貸渡し)とは全く異なり、事業として行われているものではありません。 その為、クルマの維持費軽減の枠組みを超えて、シェア料金を受け取ることはできません。 また、Anycaは共同使用に基づくサービスのため、不特定多数のオーナーと1度きりのシェアではなく、特定オーナーと長期的に共同使用契約を結んでシェアすることを前提としております。
個人オーナーのシェアにおいて、共同使用の形態から外れてしまいますと会員規約に違反するのみならず、法令に違反する恐れがあります。 当社の基準において事前に制限をかけさせていただく場合がございます。あらかじめご了承ください。 |
個人間の貸し借りではなく、自社が保有している車を第三者に貸して収益をあげようと考えておられる場合で、車検証の使用者に「借主」名を入れるとき(すなわち「リース」形態のとき)には国土交通大臣の許可は不要。それ以外のときは、国土交通大臣の許可が必要とお考えください。
第三者に車を貸していて、交通事故を起こしたときには、実際に運転していなかった者も法的な責任を追及されることがあります。その一つが運行供用者責任です。
運行供用者責任は、実際に自動車を運行していない者であっても、自動車の運行によって利益を得ている者には、交通事故被害者救済の責任を負担させようという特別の責任です(自賠法3条)。
次のとおり整理することができます。
運行供用者責任 | |
レンタカーの場合 | レンタカー会社は負う。 |
カーリースの場合 | リース会社は負わない。 |
カーシェアの場合 | 貸主は責任を負う(可能性がある。)。 |
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