2人以上の出資で会社を設立するとき必要な「創業(者)株主間契約」


株主間契約は、複数人が共同で出資をして会社を設立したりする際には必須の契約です。

株主間契約は、株主間協定やSHA(=Shareholders Agreement)ともいわれます。

このうち特に「創業時に株主同士で結ぶ契約」を「創業(者)株主間契約」といいます。

このコラムでは、株主間契約のうち「創業(者)株主間契約」について、分かりやすく説明します。

 

※ 会社設立後に外部から投資を受け入れることもありますが、この場合の株主間契約は、創業時のそれよりも遙かに複雑です。下記コラムをご参照ください。

もくじ
  1. なぜ株主間契約が必要となるのか?
  2. どんな場合に株主間契約が必要か?
  3. 株主間契約と創業(者)株主間契約の違い
  4. 創業株主間契約で定めるべき項目
  5. 創業株主間契約を締結する時期
  6. 司法書士の報酬・費用
  7. ご依頼いただく方へ(司法書士からお願い)

なぜ株主間契約が必要となるのか?!


株主同士のルールについては、会社法やそれぞれの定款で定められています。

ところが、これらの定めだけでは十分ではありません。

また、株主一人一人に違うルールを適用する場合には、定款に定めることは困難です。

それに定款に記載する場合と異なり、株主総会の決議なども不要です。

そこで、株主同士で個別に契約を結ぶことが行われます。それが「株主間契約」です。

 

このうち特に「創業時に株主同士で結ぶ契約」を「創業(者)株主間契約」といいます。

「株主間契約」と「創業(者)株主間契約」とは、具体的な条項が異なるのが通常です。

どんな場合に株主間契約が必要か?!


次のような場合には、実際にお金を動かす前に、契約を結んでください。お金が動いてしまうと事業が始まり、有耶無耶になってしまうことが多いからです。

友人とお金を出し合って会社を設立する場合(複数企業が合弁会社を設立する場合)

このコラムのテーマです。

創業時だけに限らず、次のような場合には、事前に株主間契約を締結することを思い出しましょう。

合流する人材に対して株式を持たせる場合

新しい株主が発生することになりますので「株主間契約」が必要です。

  • 一緒に働く人材に対して、恩恵として株式を渡しておく(一緒に働くのが主)場合には「創業(者)株主間契約」をご検討ください。
  • 投資が主、一緒に働くのが従という場合には「株主間契約」をご検討ください。

会社設立後、投資を受けいれる場合

投資を受ける場合、通常は、投資してくれた対価として株式を渡します。

新しい株主が発生することになりますので「株主間契約」を結ぶ必要があります。

投資家から締結を求められることも多いです。

詳しくは、下記コラムをご参照ください。

株主間契約と創業(者)株主間契約の違い


株主間契約と創業(者)株主間契約は異なります。

契約する目的と契約当事者が異なるため、次のような違いが生じます。

  株主間契約 創業(者)株主間契約

契約の目的

  • 投資家保護(投下資本の回収)と創業者の権利のバランスを取る。
  • 会社法で解決がしにくい問題、かつ、解決できないと会社運営に致命的影響を与える問題の発生予防と解決。ただし、あくまで債権的合意であるから実効力をどうやって確保するかが課題。
  • 特に創業者株主が退社する場合に円滑に株式が譲渡されるようにする目的がある。

契約当事者 

創業経営者(株主)と外部投資家 創業株主同士

契約条項の違い

みなし清算条項を入れる(別途「分配合意書」を作成して、そちらに入れることも多い。)。 みなし清算条項を通常は入れない。
取締役指名権=取締役派遣条項を入れることもある。 取締役指名権=取締役派遣条項を入れないことが多い(ジョイントベンチャーを除く。)。
リバース・ベスティング条項を通常は入れない。 リバース・ベスティング条項を入れることも多い。

創業株主間契約で定めるべき項目


次のような項目を決めておきましょう。

もっとも「うちの会社は特殊だから、こういう項目も必要じゃないか」などとご心配な場合には、当グループにご相談ください。

取締役の辞任禁止

本来(会社法上)、取締役はいつでも辞任することができます。

しかしながら、特に人的側面、金銭的側面で不足しがちなベンチャーにおいては、創業者は継続的に会社経営に関与し、人的・金銭的に会社をバックアップすることが要求されます。

創業株主間契約によって取締役の辞任を禁止することによって、その創業者固有の強みを会社に提供し続けることが可能になります。

創業株主が離脱する場合の株式買取に関する事項

万一、創業株主のうち一部の者が会社から離脱する場合には、離脱する株主の株式を買い取る定めです。

離脱する方は、買い取って貰わなければ、離脱する会社に資金がロックされたままです。

残った方は、関係が無くなった方に株主総会の資料を送ったりする手間が残ります。

そこで、一般的には、会社又は会社に残る創業株主が、離脱する創業株主に対して、その持株を売り渡すよう請求する権利を定めます。

 

「離脱」の定義

株式買取請求権が発生する「離脱」の定義も、次のとおり何通りか考えられますので、契約書では明確に定めておく必要があります。

  • 役員を退任した場合には、従業員として残ったときでも「離脱」と扱う場合
  • 役員だけでなく従業員としても残らない場合を「離脱」と扱う場合
  • 顧問や業務委託などといった継続的契約も含めて、会社との関係の一切を断った場合を「離脱」とする。

 

買取価格 

買取価格も「時価」と定めることもできれば「(当初)払込金額」と定めることも可能です。

  • 「時価」と定めた場合、企業価値が上昇している場合には、残った創業者が資金工面する必要があるため、残る側にリスクがあります。
  • 一方「当初払込金額」と定めておいて、時価が上昇していた場合には、贈与税の問題も生じ得ますので注意が必要です。

 

誰が買取請求権を有しているか

一人が離脱しても複数の創業株主が残る可能性が想定される場合(例えば当初3名以上の創業株主がいる場合)には、誰が株式買取請求権を保有しているかも定める必要があります。

  • まずAが買取請求権を有し、Aが買取請求権を行使しないときにはBが買取請求権を有する。
  • AとBが持株比率に応じて買取請求権を有する。

創業者の相続人に対して買い取りを請求する権利

創業者に相続が発生した場合、その相続人に対して会社や他の創業者が、株式を買い取りを請求する権利です。

株式を買い取る際の、買い取り範囲(リバース・ベスティング条項)

特に事業が成功して、株式価値が大きくなっている場合に効果を発揮する条項です。

会社を去る創業者にも、在籍期間等に応じて、一部の株式の継続保有を認める条項です。

 

ベスティング条項という表記もあるが、どちらが正確なの?

「ストックオプションなどで、行使できる量が勤務年数とともに増えていくのを『ベスティング(vesting)』と呼びますが、以下の例のように、最初は辞めたら100%株式を返してもらうけど、段階的に返してもらう量を減らしていくことを『リバース・ベスティング(reverse vesting)』と呼びます。(磯崎哲也・著/起業のエクイティ・ファイナンス(増補改訂版)/ダイヤモンド社/2022年/77頁)」

強制売却権

会社の買収(M&A)を行う場合、買い手は、全株式の取得を希望するのが通常です。

したがって、離脱した創業者だけがM&Aに同意せず、その持株の売却に応じないと他の創業株主も株式を売却することができません。そこで、会社が買収される際には、離脱した創業者に対して買取に応じるよう請求できる権利(強制売却権)を定めるのが通常です。

創業株主間契約を締結する時期


実際にお金を動かす前(会社設立前)に、創業株主間契約を結んでください。

お金が動いてしまうと事業が始まり、有耶無耶になってしまうことが多いからです。

司法書士の報酬・費用


創業時の株主間契約は、11万円(税込)で承ります。

投資を受け入れる際の株主間契約は、22万円(税込)で承ります。

ご依頼いただく方へ(司法書士からお願い)


株主間契約もそうですが、契約書の作成を承るときに、一番困るのが、契約当事者全員が揃ってお越しになることです。

あまり知られていませんが、契約書はAさんBさんどちらかに有利に作成することが可能です。ところが皆さんがお揃いでお越しになった場合には、皆さん平等にいわゆる玉虫色の契約書を作成することとなるからです。

 

どうかこの記事を「ご覧になった貴方様が、お一人で」司法書士事務所にお越しください。あなたに有利な契約書の条項を作成させていただきます。

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