せっかく物件売却を貴社に持ち込まれた売主様(のご家族様)です。
貴社が是非とも買取りや仲介をしたいのは、司法書士も重々承知しております。それでも売主様の状況によっては不動産取引をお断りすることがあります。それは、この記事にあるように貴社を守るためです。
この点を十分ご理解いただいたうえ、ご依頼くださいますようお願いいたします。
もくじ | |
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判断能力が無いといっても、段階があります。
まず、判断能力が全くない場合には、無効です。
民法3条の2(意思能力) | |
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。 |
意思能力は10歳前後になると備わると言われます。
一方、10歳未満の子ども、泥酔者には意思能力はありません。
不動産の売買契約という法律行為を行なうために必要なのは、意思能力があるだけでは足らず、さらに上のレベルの行為能力が必要です。
意思能力 | 行為能力 | |
意 味 | 自らがした行為の結果を判断することができる能力 | 単独で有効な取引行為(法律行為)をすることができる能力 |
効 果 | 無効 | 取消できるなど |
ないとされる例
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未就学児(小学校入学前程度の子) 泥酔者 重度の精神障害者 |
未成年者 成年被後見人 成年被保佐人 |
因みに、判断能力の有無の段階は次のとおりです。
程度 | 意味 |
契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができる。 | 行為能力に問題なし |
支援を受けなければ,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することが難しい場合がある。 | 補助相当=微妙 |
支援を受けなければ,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができない。 | 保佐相当=売却不可 |
支援を受けても,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができない。 | 後見相当=売却不可 |
したがって、司法書士は、被補助人以上の判断能力があることを認定できないと売買契約や不動産取引はできませんと申し上げます。
貴社が〔仲介する場合〕と〔買取・再販する場合〕に分けて考えてみましょう。
そうすると、Bは、仲介をした貴社を訴えて、支払済み売買代金、媒介報酬ほか損害の賠償請求をすることとなります。ちなみに、意思能力がない場合、Aと貴社との間の媒介契約も無効となりますので、一文の得もないことになります。
Cは、どのような法理論によっても保護されない(所有権を取得できない)ことになります。そうするとCは元の売主であるBを訴えて支払い済み売買代金ほか損害の賠償請求をすることとなります。
意思能力がない方を売主とする売買契約がいかに無理なことか、ご理解いただけると思います。
参照条文・民法192条(動産の即時取得) | |
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
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参照条文・民法94条(通謀虚偽表示) | |
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売主本人がご存命である限り、その親族であっても売主本人の財産を勝手に処分することはできません。売却が売主本人のためであってもです。
以下の内容をご承知おきのうえ、ご依頼くださいますようお願いいたします。
売主様(の家族)から見れば「売りたいのに、横から出てきた司法書士がいちゃもんを付けている」ように見えます。ですから、売主様(の家族)は、司法書士が面談する前からお怒りのことが多いです。
貴社の大切な顧客(候補)なのですから、司法書士は細心の注意を払って、お話をします。司法書士との面談後に、売主様が「なんと面倒な司法書士を連れてきたんだ」とお怒りになっても、司法書士の責任ではありませんので、ご容赦ください。
先に申し上げたとおり、売主に判断能力がない場合には、不動産売買をして売買代金を支払っても、買主様への所有権移転という法律効果が生じません。
買主様への所有権移転という法律効果が発生しないのに、所有権移転登記を申請すると公正証書原本不実記載等罪(刑法157条)が成立し、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
刑法第157条(公正証書原本不実記載等罪) | |
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売主に判断能力がないことを分かっていながら、所有権移転登記を行なうと、司法書士は業務停止処分を受ける可能性が高いです。
業務停止などの処分を一度受けてしまうと、永遠に情報として残ってしまい、一生涯、その処分を背負っていくことになります。
このあたりも、重々ご理解いただければ幸いです。
判断能力は、①売買契約締結時だけでなく、②不動産取引時(最終残代金支払い時)にも必要です。
ところが、お年寄りの体調、認知症は日々悪化することもございます。
売買契約前に判断能力ありとしたものが、不動産取引時には悪化しており、意思能力がないということも十分にありえます。
そのような場合には、不動産取引関係者の労力が徒労に終わってしまうこともあり得ます。
ご依頼された不動産会社様から
報酬として11,000円、司法書士事務所外の場合には別途日当・交通費をいただきます。
なお、判断能力がないという判断に至った(したがって、不動産取引ができない)場合でも、いただくことになりますのでご注意ください。
せっかく物件売却を貴社に持ち込まれた売主様(のご家族様)です。
貴社が是非とも買取りや仲介をしたいのは、司法書士も重々承知しています。それでも売主様の状況によっては不動産取引をお断りすることがあります。それは、この記事にあるように貴社を守るためです。
この点を十分ご理解いただいたうえ、ご依頼くださいますようお願いいたします。