司法書士は、日本における相続手続のスペシャリストです。
その司法書士から、帰化した方に対して、お願いがあります。
それは、あなたに万一のことがあった場合に備えて「遺言」を作成していただきたいということです。詳しくご説明します。
あなたが死亡した場合、配偶者や子供に財産の名義を移そうとすると、相続手続が必要です。そして、日本の相続手続は、あなたが「出生したときから死亡するまでの戸籍」が全て必要です。あなたの子供が他にいないことを証明するためです。
ところが、帰化したあなたの場合、「出生から帰化するまでの(日本の)戸籍」は存在しません。
あなたが帰化して日本国籍を取得したときには、あなたについて新しい戸籍が作成されます。
この新しい戸籍には「どの国から帰化した」ということは記載されますが、元の国における住所などは一切記載されません。
相続人の方は、あなたが「出生した時から帰化するまで」の家族関係を証明する書類を集めることに苦労することになるのです。この家族関係を証明する書類は、あなたの帰化前の国から取得しないといけないからです。
一方、公正証書で遺言を作成していれば、配偶者やお子様への相続手続は簡単です。
もっとも公正証書遺言の内容を、他の相続人に通知する必要がありますので、帰化前の国に相続人がいる場合には、どこに住む何という名前の方であるのかメモを残しておかれることをオススメします。
自筆証書遺言の場合には、あなたの死後、あなたの家族は裁判所に遺言書を提出して「検認」という手続をする必要があります。この検認手続をするためには、あなたの出生から死亡までの戸籍を添付しなければなりません。
法務局保管自筆証書遺言の開示を受けるためには、あなたの出生から死亡までの戸籍を添付する必要があります。
これらの遺言では、ご家族の手間を減らすことはできないのです。