スポットでも使える「補助+代理権付与」【事例紹介】


「スポットでも使える「補助+代理権付与」では「補助+代理権付与」がスポットで使える理由(理論)をご紹介しました。

こちらでは、イメージをつかみ易いように架空の事例でご確認ください。

【事例】

被相続人X、相続人はA・B・Cの3人。相続人Cは認知症の初期段階で、ときどき頓珍漢なことを言うが、生活に特に支障はない。Cの娘のZは、Cが、A・Bと、ちゃんと遺産分割協議ができるか心配している。そこで、自分のまちの司法書士事務所を検索したところ、あなたのまちの司法書士事務所グループがヒットし、グループの事務所を訪れた。

司法書士髙野

状況はだいたいわかりました。いくつか質問させてください。  

  はい。どうぞ。

Zさん


Cさんには認知症の診断が出ていますか?  

  はい。ちゃんとした診断書があるわけではないですけど、かかりつけの先生に認知症の初期と言われてて、今後、進行してしまう可能性もあると言われてます。

実際の状況はどうなんですか?Zさんから見て、判断能力は?   

  私は娘なので公平に見れているかわかりませんが、まだ大丈夫だと思う一方で、ときどき少し心配なときもあります。遺産分割では言いくるめられてしまうのではないかと心配しています。 

ありがとうございます。Cさんは、Zさんが心配していることや、今日、ここに来ることは知っていますか?  

  はい、知っています。私の話はよく聞いてくれますので。

そうですか。では、成年後見用の診断書を取ってみることをお勧めします。その診断書で補助相当の診断がでれば、補助開始の申立ができます。  

  補助?

はい。成年後見制度って3つの類型がありまして、ご本人の判断能力があるほうから順に、補助・保佐・後見に分かれています。その補助です。つまり、一番判断能力がある類型です。  

  あの、でも、成年後見て聞いたことがあるんですけど、一生辞められないんですよね?今回の遺産分割だけが心配で、普段の生活には特に問題ないと思うので成年後見は使いたくないです。

はい。さっきの、保佐・後見の類型ではそのとおりです。簡単にはやめられません。ですが、補助は、やめることができます。  

  ええ!?本当ですか?やめられるんですか??やったことあるんですか???

はい、あります。Cさんのケースでは、遺産分割だけの代理権を付ける補助開始の申立てをし、遺産分割が終了したら代理権取消の審判の申立てをします。代理権が取り消されれば補助そのものは自動的に取り消されることになるんです。  

  そうなんですか・・・

補助は、開始するときに、開始そのものに本人の同意が必要ですし、何を頼むのかも全部本人が決めることができますので、頼むのは『遺産分割の代理だけ』とすることができます。その遺産分割が終了したらその代理権は不要ですからね。それを取り消して終わります。実は、補助制度そのものが最初からそういう使われ方を想定しているものなんです。ただ、あまり知られていないような気がします。  

  へ~。思ってた制度とは違いました。ちょっと診断書を取ってみたいと思います。・・・例えば、診断書が『ホサ』でしたっけ?補助以外のものだったらどうしたらいいんでしょう?

そのときは、それでも後見制度を使うとすれば、複数保佐・複数後見というものを使って一時的に私とZさんが協力して課題解決をし、課題解決後に私が辞任するというようなことも考えられます。そのときは、また、そのときにご説明しますね。  

  ありがとうございます。      

ちょっと注意点を確認しますね。

  1. まずCさんの意思を確認してください。こういう制度があるから使いませんか?とご説明してあげてください。必要でしたら同席してご説明します。
  2. 次に後見用の診断書を取ってみてください。診断書の作成には『本人情報シート』というものを提出する原則があるのですが、お父様にケアマネさんとかいますか?いたらその方に『本人情報シート』を作成してもらってから医師にお願いしてください。あとで、本人情報シートと診断書をお渡ししますね。
  3. 私に申立書類の作成をご依頼いただくと、最初の申立書作成の報酬と実費がかかります。
 

 

わかりました。ありがとうございました。

父と相談してご連絡します!


いかがでしょうか。なんとなくイメージしていただけましたら幸いです。ちなみに、今回、司法書士は鑑定の説明をしませんでした。これは、補助の場合、鑑定が行われないことを意味しています。鑑定の可能性は、保佐・後見の場合に限られますので、これも補助の特徴です。この点を考えてみても利用しやすい制度と言えそうですね。

まとめ


成年後見制度は、ネガティブな報道がされたり、実際の利用者から批判されたりするなどして、現在、改正に向けての動きが活発化しています。数年後には今とは違う制度になっている可能性もあります。もちろん、どのような法や制度であっても、時代とともに変化する社会のニーズに合わせた改善や改正がされて然るべきものと考えます。

 

ただ、その一方で、その改善や改正を待てない、今日明日の支援が必要な人がいる現実もあります。そのような方からご相談を受けた際、今ある制度を活用して、当事者にとってより良い解決ができないか考え、その方法を模索することも私たちに期待されていることのはずです。

まずは、今ある制度を100%活用できるよう精進を重ねて参ります。

この記事の執筆者


司法書士 髙野守道

川のほとり司法書士事務所

平成28年司法書士登録

葛飾生まれ、葛飾育ち、葛飾在住、事務所も葛飾

 

開業当初から、世の中の「困った」を一つでも多く解消すること、軽減させることを念頭に、先義後利の精神で今日も駆けずり回っている。

義理と人情溢れる下町の頼りになる司法書士になれたらいいな、なれるといいな。



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