❶任意後見契約の締結~任意後見監督人選任(任意後見の開始)~任意後見終了までの流れ
❷各時点における注意点
について、法律に詳しくない一般の方でも、分かりやすいようにご説明します。
もくじ | |
()書き部分(番号でいうと、4~7、15~18です。)は、必ずしも必要ではない手続です。 |
任意後見は、「見守り契約」から始まり「財産管理契約」を経て「任意後見契約の効力発生」まで、長い時間を一緒に過ごしていただくことになります。
長い時間を一緒に過ごすために必要なものは、ご本人と私たち司法書士との間の信頼関係です。
ですから・・・何度かお会いして、少し時間をかけてお話しして信頼関係を築きましょう。
ご面談では次のような情報をゆっくり・じっくりと教えていただきます。
ご本人の判断能力低下により、聞き取りが困難になりますので、最初にしっかりお伺いします。
【1】ご本人の判断能力は、大変重要です。後日、判断能力がないことを理由に任意後見契約の効力が否定されると、既にその時点では新たに任意後見契約を締結することは不可能でしょうから、ご本人にとっても大変な不利益となります。
【2】次のような事項について、ご説明しご理解いただきます。
どんな内容を司法書士にご依頼なさりたいのか、じっくりお話しをして契約書を作っていきます。
まだ元気だけれど、見守って欲しいという場合には『見守り契約』【3】を追加します。
足が不自由なので、今から銀行入出金をして欲しい場合には『財産管理契約』を追加します。
契約の内容が決まれば、公証役場で公正証書で契約を締結します。
〔任意後見契約の3つの形態〕
〔任意後見契約を結ぶ当日の必要書類〕
【3】ご本人がご家族と暮らしている場合にも、最低限「見守り契約」をお願いしています。判断能力の低下が認められるにもかかわらず、任意後見監督人選任の申立をしないことによって、ご本人の財産が散逸した場合、任意後見契約受任者もその責任を追及される可能性があるからです。
【4】任意後見契約の内容によって必要になります。
公証人が登記申請を行ないます(「登記を嘱託する」といいますが、私たち個人や司法書士ではなく役所などが職権で登記してくれることを嘱託登記と言います。)。
登記される事項は次のとおりです(後見登記等に関する法律5条)。
任意後見法には、任意後見契約の変更については規定がない。
後見登記法にも、ご本人・任意後見受任者の住所・氏名・本籍以外は、変更登記方法の記載がない(後見登記法7ⅠⅡ)
⇒ 既存の任意後見契約を解除したうえ、新たな任意後見契約を締結する。
本人又は任意後見受任者は、いつでも、公証人の認証を受けた書面によって、任意後見契約を解除することができる(任意後見契約法9Ⅰ)。
法定後見開始申立てをして法定後見が開始したとしても、任意後見契約が締結されており、任意後見監督人が選任された場合には法定後見は終了します(任意後見契約に関する法律4条2項)
判断能力が低下していないことを確認するため定期的な電話連絡と訪問を確認させていただきます。
ご本人の住民票上の住所を管轄する家庭裁判所です。
申し立てを出来る方には制限があり、本人・配偶者・4親等内の親族・任意後見受任者のみが申し立てできます(任意後見契約法4)。
ご本人以外が申立人となるとき | 原則 | ご本人の同意が必要(任意後見契約法4Ⅲ) |
例外 | ご本人が意思表示できないとき |
次のような書類を作成します。
ご本人に関する書類
申立人に関する書類
任意後見受任者に関する書類
任意後見監督人候補者に関する書類
任意後見契約の効力を発生させるための任意後見監督人の選任及び任意後見監督人が欠けた場合における任意後見監督人の選任の申立ては、審判がされる前であっても、家庭裁判所の許可を得なければ、取り下げることができません(家事事件手続法221)。
❶ ご本人が未成年のときには、任意後見監督人は選任されません(任意後見は開始しません)。(任意後見契約法4Ⅰ①)
❷ ご本人に法定後見が開始している場合で、法定後見の継続がご本人の利益のために特に必要であると認めるときには、任意後見監督人は選任されません(任意後見は開始しません)。(任意後見契約法4Ⅰ②)
❸ 申立てに関するご本人の意思確認(任意後見開始に対する同意)を行ないます(任意後見契約法4Ⅲ、家事事件手続法220Ⅰ①)。
原則:ご本人が家裁に出頭します。
例外:入院などにより外出困難なときは、家裁調査官が入院先を訪問してくれます。
❶任意後見人としての適格性を調査します(家事事件手続法220Ⅲ)。
❷任意後見人が家裁に出頭します。
❸任意後見受任者が次に該当する場合には、任意後見は開始しません(任意後見契約法4Ⅰ③)
申立のときに「ご本人のご家族の同意書」を添付していないときには、家裁が主に書面で調査を行ないます。
原則 |
任意後見監督人を選任し、法定後見を取り消す(任意後見契約法4Ⅱ) ∵任意後見優先の原則 |
例外 |
法定後見の継続が本人の利益のため特に必要であると認めるとき ☛任意後見監督人を選任せず、法定後見が継続します(任意後見契約法4Ⅰ②) |
任意後見監督人に特別送達される(家事事件手続法74Ⅰ:同条では「相当と認める方法」と規定されているが効力発生日を明確にするため特別送達されるのが実務です。)。
本人・申立人・任意後見契約受任者には普通郵便で送付される(家事事件手続法222①、74Ⅰ)。
即時抗告はできず(家事事件手続法85.223)、任意後見監督人に対する送達により「任意後見監督人の選任」と「任意後見契約」が発効する(家事事件手続法74Ⅱ)。
申立人に送達される(家事事件手続法74Ⅲ)。
申立人は送達を受けてから2週間以内に即時抗告できる(家事事件手続法223①)。
即時抗告も棄却する決定は、告知と同時に確定する。
裁判所書記官が登記を嘱託します(家事事件手続法116①、別表第一111、家事事件手続規則77)。
登記される事項は次のとおりです(後見登記等に関する法律5条)。
なお、任意後見が開始したときでも、戸籍には記載されません(家事事件手続法116①。家事事件手続規則76)
法律上、報告時期についての定めはありません。
もっとも日本公証人連合会の任意後見契約書の書式では、任意後見人は、任意後見監督人に対して「3か月ごと」に書面で報告するので参考にして、報告時期を決めます。
任意後見人に不正な行為、著しい不行跡その他その任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、任意後見監督人、本人、その親族又は検察官の請求により、任意後見人を解任することができる(任意後見契約法8)。
違法な行為または社会的に非難されるべき行為を意味します。
ご本人の財産を私的に流用するなどの財産管理に関する不正がこれに当たるとされています。
品行が著しく悪い事を意味します。直接職務に関係しない行状の問題でも、それが著しく不適切であれば、任意後見人の適格性を欠くとされているのです。
権限濫用、管理失当(財産管理が不適切)、任務怠慢を指すとされています。
(上記3つの具体例は、弁護士井上元・同那須良太・同飛岡恵美子著「Q&A任意後見入門」民事法研究会・H25・98-99pを参照した)
本人又は任意後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、任意後見契約を解除することができます(任意後見契約法9Ⅱ)。
など(具体例は、弁護士井上元・同那須良太・同飛岡恵美子著「Q&A任意後見入門」民事法研究会・H25・95-96pから抜粋)
任意後見が継続している場合でも、法定後見開始申立てをすることができます。
原則 |
任意後見は法定後見に優先する ∵任意後見はご本人が自分で決めて契約したのだからご本人の意思を尊重する必要がある。 |
例外 | 本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができる(任意後見契約法10Ⅰ)。 |
など(具体例は、弁護士井上元・同那須良太・同飛岡恵美子著「Q&A任意後見入門」民事法研究会・H25・101pから抜粋した。)
任意後見契約は終了する(任意後見契約法10Ⅲ)
× 「管理すべき財産が無くなった」ことは終了事由ではありません。
任意後見が終了した場合、家庭裁判所が新たな任意後見人を選任することはありません。
任意後見は、あくまで本人の希望で後見人を選ぶ制度だからです。
よって、任意後見終了後も後見が必要なご本人の場合には、法定後見の開始申立てが必要です。
業務の種類 | 司法書士の手数料 | 実費 |
任意後見契約の公正証書原案作成 |
110,000円(税込)~ |
5万円ほど (公証人手数料など) |
任意後見契約【2】 +見守り契約【3】の公正証書原案作成 |
132,000円(税込)~ |
5万円ほど (公証人手数料など) |
任意後見契約【2】 +財産管理等委任契約【4】の公正証書原案作成 |
165,000円(税込)~ |
5万円ほど (公証人手数料など) |
任意後見契約【2】 +見守り契約【3】 +財産管理等委任契約【4】の公正証書原案作成 |
187,000円(税込)~ |
5万円ほど (公証人手数料など) |
任意後見監督人選任申立 (任意後見契約の効力発生) |
110,000円(税込)~ |
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任意後見契約効力発生後の 任意後見人報酬 |
33,000円(税込)~/月 |
【1】 実費は、①印紙代等5,000円、②添付戸籍など5,000円です。
【2】 任意後見契約:ご本人の判断能力が十分なうちに、将来判断能力が衰えた場合に備えて、あらかじめ財産管理を任せる人と内容を決めておく契約。
【3】 見守り契約:任意後見が始まるまでの間、ご本人と定期的に連絡をとり、任意後見を始める時期を判断するための契約。
【4】 財産管理契約:ご本人の判断能力は十分だけれど、身体的な問題で、金銭管理を第三者に委ねる契約。