遺言に関する改正民法と付則


平成31年から令和2年にかけて、遺言に関する重要な法改正がたくさんありました。

 

【終活:遺言作成時点の注意事項】

これ以前に遺言書を作成された方は、遺言を見直す必要があります。

これから遺言書を作成される方は、最新の書籍を参考にする必要があります。

【改正民法対応】遺言見直しチェックリストもご参照ください。

 

【相続・遺言執行時点の注意点】

さらに、遺言の効力が発生した(遺言者が天寿まっとうした)場合には、作成時点で適法な遺言であったかをチェックしてから相続手続や遺言執行を行なう必要があります。

『付則』は、改正法が「いつ時点の法律行為に適用されるのか」を定めたとても大切なものです。

平成31/令和元(2019)年
施行日 分類 内容
1月13日 自筆証書遺言の要式緩和

遺産目録は自筆でなくても可になった(民968ⅡⅢ)。

施行日前に作成された遺言はなお従前の例による(附則6)。

7月1日 改正民法【原則施行日】

原則:施行日前に開始した相続には、改正法は適用されない(附則2)。

同上 特別受益持戻意思表示推定

婚姻20年夫婦の居住用不動産の遺贈・贈与は、特別受益持戻し免除と推定される(民903Ⅳ)。

施行日前にされた遺贈・贈与には適用しない(附則4)。

同上 遺産分割前の預金払戻し

遺産分割前の預金払戻制度が創設された(民909条の2)

施行日前に開始した相続でも、施行日後にする払戻請求に適用する(附則5Ⅰ)。

同上 不動産相続の対抗要件

遺産分割も遺贈も、法定相続分を超える部分は、対抗要件(登記)必要(民899の2Ⅰ)

同上 可分債権相続の対抗要件

遺産分割も遺贈も、法定相続分を超える部分は、対抗要件(通知)必要(民899の2Ⅱ)

施行日前に開始した相続でも、施行日後にする請求に適用する(附則3)

他人への貸付金の相続手続

同上 遺産分割前の遺産処分

遺産分割前に遺産を勝手に処分されても、処分した相続人以外の相続人が同意すれば、処分された財産もなお遺産に含まれるものとして遺産分割ができる(民906の2)

同上 遺言執行者の権限明確化

・遺言内容通知義務・遺言執行者の権利義務(民1007Ⅱ、民1012)施行日前開始相続でも、施行日後執行者となった者に適用する(附則8Ⅰ)。

・特定財産承継遺言に関する遺言執行(民1014Ⅱ~Ⅳ

)施行日前にされた特定財産承継遺言の遺言執行者に適用せず(附則8Ⅱ)。

・遺言執行者の復任権(民1016)施行日前遺言の遺言執行者の復任権の制限は従前の例(附則8Ⅲ)。

同上 遺留分制度見直し 遺留分減殺請求は、金銭債権化されたほか(民1046)
同上 特別寄与料制度の創設 相続人以外の親族が被相続人の療養看護に努めた場合、請求が認められる(民1050)。
令和2(2020)年
施行日 分類 内容
4月1日 

配偶者居住権の創設

配偶者短期居住権の創設

施行日以後に開始した相続に適用、施行日前に開始した相続は、なお従前の例による(附則10Ⅰ)

同上 遺言による配偶者居住権

施行日前にされた遺贈については適用しない(附則10Ⅱ)

同上 遺贈義務者の引渡義務

民法998。

施行前にされた遺贈に係る遺贈義務者の引渡義務はなお従前の例による(附則7Ⅰ)。

同上 第三者の権利の目的である財産の遺贈

民法1000。

施行前にされた第三者の権利の目的である財産の遺贈については、改正前1000条が効力を有する(附則7Ⅱ)

同上 撤回された遺言の効力

民法1025但

施行日前に撤回された遺言の効力は、なお従前の例による(附則9)

7月10日 自筆証書遺言の保管制度 自筆証書遺言を法務局で保管する制度を創設する。

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