市町村行政から「生産緑地に関する意向調査票」や「特定生産緑地制度への指定同意書」の送付を受けた方は、真剣に検討する必要があります。
特定生産緑地への意向の意思表示の期限はもうすぐです。
2022年4月から特定生産緑地の指定が始まりますが、神戸市などでは2021年が意思表示の期限とされているようです(特定生産緑地制度について:神戸市資料)。
もくじ | |
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市街化区域【1】内にある農地のうち、行政から「生産緑地の指定」を受けた農地のことを言います(生産緑地法2③)。田圃の端っこに「生産緑地」という杭が打ってあります(生産緑地法6条)。
【1】「市街化区域」とは、市街地化つまり宅地化を進めようと行政が決めた地域です。反対に「市街化調整区域」とは、市街になることを調整する(=日本の良き田園風景を守ろう)という地域です。
次のようなメリットがあります。
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【1】市街地にある農地(生産緑地でない場合)の固定資産税評価はザックリと申し上げると「その農地を宅地とした場合の固定資産税評価」から「その農地を宅地に造成するための工事費」を評価して算出します。よって、とても高額な固定資産税評価になり、固定資産税も高額になります。
一方、生産緑地の場合には、神戸市では10アール(1000平方メートル)あたりの固定資産税・都市計画税の目安は、2500円/年(田)・1200円/年(畑)と、極定額に抑えられています。
【2】猶予された相続税は、あなたが亡くなるまで農業を続けた場合などに免除されます。生産緑地の指定が解除される2022年で免除されるわけではありません。
【3】市街地にある農地(生産緑地でない場合)の相続税評価はザックリと申し上げると「その農地を宅地とした場合の路線価」から「その農地を宅地に造成するための工事費」を評価して算出します。よって、とても高額な相続税評価になります。
反対に次のようなデメリットがあります。
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「〇〇市 生産緑地 マップ」などでGoogle検索をすると該当ページを検索できます。
当グループ周辺市町村のMAPは次のリンク先にあります(2020.9調べ)。
登記情報を確認すると、生産緑地の場合には財務省を抵当権者とする「納税を猶予した相続税を担保するための抵当権」がついています。
この生産緑地制度が、2022年3月一杯で終了してしまいます。
もし生産緑地の恩恵を継続して受けようという場合には、特定生産緑地の指定を受けなければなりません。そして、この特定生産緑地の指定は10年ごとに、指定を延長するか、指定を受けないかを選択する必要があります。
10年に一度しか、対策を検討する機会がないのです。
その期限が2022年3月にやってきます。今対策を検討しなければ、次は2032年3月です。
生産緑地を所有している方には、市町村から「特定生産緑地制度のお知らせ」が届き、その中で「特定生産緑地の指定を受けるように促している」と思います。
しかし、チョット待ってください。
市町村は、政府の「特定生産緑地制度の利用を普及しよう」という立場を追認して、特定生産緑地の指定を受けるよう促しますが、特定生産緑地の指定を受けるということは、「高額な相続税を支払わなければならない」問題の子孫への先送りです。
ここは、流されることなく、賢く対策する必要があります。
下図は国交省が作成した生産緑地の指定を継続する(=特定生産緑地の指定を受ける)場合と、解除する場合の表です。
この表を要約しますと・・・
特定生産緑地の指定を受ける
農業を10年間継続する。 相続対策を先送りする。【1】 |
又は |
特定生産緑地の指定を受けない。
相続対策する(猶予された相続税を支払う)。 |
【1】生産緑地の指定を受ける場合でも、相続税の納税猶予を受けることが必須ではありません。
生産緑地を継続するか止めるかは、10年に一度しか検討することができません。
10年は相当長い期間です。子世帯はもちろん、孫世帯にも農業を継ぐ意思があるのか確認する必要があります。
資産家であっても、三回相続すれば資産が無くなってしまうと言われる厳しい我が国の相続税です。
あなたの代で相続税が納税できなければ、子世帯・孫世帯は余計に厳しい可能性があります。
また、日本は人口減少時代に突入しています。子世代・孫世帯になって不動産を売却しようとしても、十分な価格で売却できるとは限りません。
生産緑地の指定を継続するか否かを判断するうえで最低限の知識は、次の3点です。
実際に指定を受けず相続対策をするためには、専門家チームの助けが必要不可欠です。
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普通の不動産同様に売却できるようになるまで最低4か月以上かかることを、ご理解ください。
生産緑地の耕作者が死亡または故障したことを理由として生産緑地指定の解除を受ける場合には、買取申出の前に、農業委員会に対して、その方が主たる従事者であったことを証明してもらう必要があります。毎月締切日が設定されていて、これに遅れると1か月待つことになりますので、ご注意が必要です。
なお、生産緑地指定後30年が経過したことを理由として生産緑地指定の解除を受ける場合には、この手続は不要です。
生産緑地法第10条
生産緑地の耕作者が死亡または故障した場合には、農業委員会にその方が主たる従事者であったことを証明してもらう必要があります。
都市計画課への買取り申出書提出から3か月経過後に解除されます。
これまではお客様ご自身が、それぞれの専門家を探し出し、バラバラに依頼しなければなりませんでした。依頼した後も、専門家と連絡をとり、求められる書類をそれぞれに提出する必要がありました。
専門家 | 検討すべき課題 | 専門家サービス | ||
お客様 |
→ ← |
司法書士 | ご自身のための資産管理対策 | 認知症対策(成年後見・家族信託) |
→ ← |
司法書士 | ご家族のための相続対策 | 相続紛争予防(遺言など) | |
→ ← |
税理士、FP | ご家族のための相続税対策 | 相続税試算、試算組み替え | |
→ ← |
司法書士、税理士 | 生産緑地を解除すべきか | 上記終活3つを総合評価 | |
→ ← |
行政書士 | 生産緑地解除の手続 | 市町村役場への書類提出 | |
→ ← |
不動産会社 | 指定解除後の売却 | 仲介 | |
→ ← |
司法書士 | 不動産の名義変更 | 不動産登記 | |
→ ← |
税理士、FP | 売却代金の運用 | 相続税対策 |
当グループ所属司法書士にご依頼いただくことにより、当グループが窓口となって多種多様な専門家との連絡調整を行ないますので、とても楽です。
専門家 | 検討すべき課題 | 専門家サービス | ||||
お客様 |
→ ← |
当グループ |
→ ← |
司法書士 | ご自身のための資産管理対策 | 認知症対策(成年後見・家族信託) |
→ ← |
司法書士 | ご家族のための相続対策 | 相続紛争予防(遺言など) | |||
→ ← |
税理士、FP | ご家族のための相続税対策 | 相続税試算、試算組み替え | |||
→ ← |
司法書士、税理士 | 生産緑地を解除すべきか | 上記終活3つを総合評価 | |||
→ ← |
行政書士 | 生産緑地解除の手続 | 市町村役場への書類提出 | |||
→ ← |
不動産会社 | 指定解除後の売却 | 売買仲介、買取り | |||
→ ← |
司法書士 | 不動産の名義変更 | 不動産登記 | |||
→ ← |
税理士、FP | 売却代金の運用 | 相続税対策 |
生産緑地が関係する場合であっても、終活で一番大切なことは、相続税ではありません。
例えば
相続紛争予防のために遺言を作り、相続税対策も出来ていたとしても、認知症になってご自身の資産管理が出来なくなると、問題です。【老後の資産管理対策が不十分なパターン】
農地を税負担少なく、長男に継がせることが出来たとしても、二男に渡す財産がなければ二男は長男に金銭の請求をすることになってしまいます。【相続紛争予防の対策が不十分なパターン】
終活の重要度(順番)は次のとおりですので、くれぐれも順序を逆転なさらぬようご注意ください。
老後の資産管理対策 > 相続紛争予防対策 > 相続税対策 |