所有者不明土地問題を解消するための法改正と施行時期【一覧】


所有者不明土地問題を解決するため、①積極的な法改正(民法、不動産登記法、不動産登記規則をはじめ戸籍法施行規則、住民基本台帳法施行令、租税特別措置法など)と②新法制定が行なわれています。

 

わかりにくい多数の法改正と施行時期を一覧にしました。どちらかというと専門家向けの内容です。

皆さまのお役に立てば幸いです。

もくじ
  1. アプローチ方法による分類
  2. 施行時期による分類と概要
  3. 人気の関連ページ

アプローチ方法による分類


所有者不明土地問題を解決するための法改正をアプローチ方法で分類すると次のとおりです。

既にある不明土地を解消する 不明土地を新たに発生させない
  • 民法の共有制度の見直し
  • ランドバンクの活用【1】

【1】ランドバンクとは、土地所有者・利用希望者向けの相談体制の構築や空き地の利用・管理の仕組みの構築等の取組を検討・実施している団体(NPO団体、民間事業者、法務・不動産の専門家、市区町村等)のことです。

施行時期と概要


施行時期未定のものは確定次第追記していく予定です。

実施時期 施策 概要
平成22年 戸籍保存期間伸長

除籍などの役所での保存期間が80年から150年に延長された。相続手続では全相続人を把握するため、被相続人の出生から死亡までの戸籍を全て収集する必要があるところ、戸籍が廃棄されており相続人が把握できないため相続登記ができないという問題があった。相続登記できない土地の発生を抑止することで、所有者不明土地の発生を抑止する。

戸籍法施行規則の改正。

平成29年5月 法定相続情報証明制度導入

相続手続に必要な戸籍の束を法務局が一通の証明書にすることで、相続登記の促進を促し、相続登記未了土地の発生を抑止する。

不動産登記法、不動産登記規則の改正。

平成30年4月1日 相続登記登録免許税の免税

令和7年3月31日までの期間限定で免税される。

(1)相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置【1】

(2)不動産の価額が100万円以下の土地に係る登録免許税の免税措置【2】

租税特別措置法84の2の3ⅠⅡ

令和元年6月20日 戸籍附票の保存期間伸長

除(住民)票、戸籍の除附票および改製原附票の保存期間が5年から150年に延長された。本籍地を移した方の住所変更変遷がたどれないという問題が解消され、所有者不明土地の発生を抑止する。

住民基本台帳法施行令の改正34条。

令和元年9月 長期相続登記未了の通知制度の導入

30年以上相続登記がされていない土地の相続人を法務局が職権で調査し「長期間相続登記等がされていないこと」を相続人に通知することで、相続登記未了土地の発生を抑止する。

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法

同特措法に規定する不動産登記法の特例に関する省令。

令和元年11月22日 表題部所有者不明土地問題への対応

表題部所有者の住所氏名が正確に登記されていないため、相続人の探索ができない土地について

①登記官に所有者の探索のために必要となる調査権限を付与

②所有者等探索委員制度を創設

③所有者の探索結果を登記に反映させるための不動産登記法の特例

表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律

令和2年11月1日 表題部所有者不明土地問題への対応

所有者を特定することができなかった表題部所有者不明土地について、探索しても所有者を特定できなかった場合、裁判所選任した管理者による管理を可能とする制度を新設

表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律

令和5年

4月1日

 

遺産分割協議の期間制限

  • 相続開始後10年経過すると特別受益・寄与分などの主張ができなくなる(改正民法904の3)。遺産分割を促進することで、放置を予防する。
民法等の一部を改正する法律、民法、不動産登記法

共有に関する改正

  • 共有不動産の所在不明共有者を解消するため他の共有者に取得権・売却権を付与(改正民法262の2)
  • 所有者不明土地管理命令・所有者不明建物管理命令の創設(改正民法264の2)
  • 管理できていない土地・建物の管理命令の創設(改正民法264の9)

民法等の一部を改正する法律、民法、不動産登記法

令和5年

4月27日

相続土地を国に引き取って貰う制度の創設

相続した不要な土地を、土地のまま、国が引き取る制度を創設することで、不要な土地が放置されることを抑止し、所有者不明土地の発生を抑止する。

相続土地国庫帰属法の制定。

令和6年

4月1日

相続登記義務化
  • 相続発生時の相続登記を義務化する(改正不登法76の2)ことで、相続登記未了土地の発生を抑止する。
  • (暫定的な)相続人申告登記制度開始(改正不登法76の3)

不動産登記法の改正。

令和8年2月2日 名寄せ

ご自身(その相続人、法人も含む。)は、自己の所有する全ての不動産情報を法務局で証明してもらうことが可能になります(改正不登法119の2)

令和8年4月1日 住所氏名変更登記の義務化

引越や氏名変更した場合の住所氏名変更登記を義務化する(改正不登法76の5)ことで、所有者不明土地の発生を抑止する。

改正法施行前に住所氏名変更があった場合にも適用されます(民法等の一部を改正する法律附則5Ⅶ)

不動産登記法の改正。

   

 

【1】免税措置のイメージ

免税を受けることができる相続登記の申請のイメージは、イラストのとおりです。

登記名義人となっている被相続人Aから相続人Bが相続により土地の所有権を取得した場合において、その相続登記をしないまま相続人Bが亡くなったときは、相続人Bをその土地の登記名義人とするための相続登記については、登録免許税が免税となります。

〔免税措置のメリット〕

上記のような場合に、必ずしもCがその土地を相続している必要はなく、例えばBさんが生前にその土地を第三者に売却していたとしても、第一次相続(AB間)についての相続登記の登録免許税は免税となります。

【2】免税措置のイメージ

イラストは、法務省HPより。説明文は法務省HPを参照した。

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