相続に関与しようとする民間資格や民間団体にご注意ください。


新聞、雑誌、テレビに出ていた方なので安心して相続手続を頼んだら、後日、支払う必要のない費用だと分かった。

  • テレビCMをしていた。
  • テレビでコメンテーターをしていた。
  • いつも購読している雑誌に掲載されていた。
  • 有名な媒体に掲載されていた。

それだけで「民間資格」を信頼してはいけません。特に昨今「相続ビジネス」などと銘打って、荒稼ぎしようとする「民間資格」が増えています。「民間資格」については、よく調べれば、怪しいと分かります。しかしながら、騙されてお金を支払ってしまう方もいらっしゃいます。

 

そこで、皆様にご注意いただきたく、この記事を執筆しました。

  1. 身近な方が亡くなった方へ:相談すべきは「司法書士」「税理士」「弁護士」のいずれかです。これら以外の者や民間資格には、皆さんの相続手続に関与する十分な知識も権限もありません。知識不足の者によるアドバイスは、相続手続きを混乱させます。権限不足で何もできないため、彼らへの支払いは無駄になります。
  2. 相続に関する民間資格の取得を目指す方へ:民間資格を取得しても「相続に少し詳しい人」になれるだけで、独占できる業務は一切ありません。怪しげな民間資格を取得して、時間を無駄になさらないようご注意ください。
  3. 弁護士、税理士、行政書士、司法書士の方へ:怪しげな民間資格をこれ以上増長させないためにも、民間資格へのご協力は、絶対に止めておきましょう。若干売上にプラスがあったとしても、彼らの集金システムは驚くほど巧妙で、長い目で見ると全国家資格にとってマイナスの効果しか生まないと思います。特に行政書士は、バックマージンを禁止されていないことを、民間資格や他資格に悪用されているとも聞き及んでおりますので、ご注意ください。
もくじ
  1. 民間資格とは
    1. 「士」や「公認」が付いても国家資格ではない。
    2. 次々出てくる民間資格の数々
  2. 相続を相談すべきは「国家資格」
    1. 相続に関する国家資格「三士業」
    2. 民間資格は無資格と同じ
    3. 国家資格と民間資格の比較(まとめ)
  3. 民間資格が宣伝しているメリットは本当か?
    1. 民間資格は、マスコミによく登場します。
    2. 民間資格の言う「(民間資格による)適切な国家資格のコーディネート」は不要。
    3. 民間資格の言う「司法書士は、分割方法や方向性が決まっていないと受けてくれない」は大嘘。
    4. 国家資格に「直接」相談や依頼をした場合
    5. まとめ
  4. 民間資格を取得しようという方へ
  5. 民間資格から協力要請された国家資格の先生方へ

民間資格とは


「士」や「公認」が付いても国家資格ではない。

民間資格(相続○○士、相続コンサルタントなど)

いずれも、さも権威があるかのような資格名を名乗ります。

民間資格には、国家資格と同じように末尾に「士」がつくものもありますが、国家資格ではありません。

民間資格には、「公認」とつくものもありますが、国家資格ではありません。

 

民間団体(NPO法人、一般社団法人、公益社団法人、株式会社など)

法人を設立して、相続に関与しようとする団体もあります。

団体の役員として、有名大学教授、司法書士、弁護士、税理士などを並べることも多いです。

 

権威がありそうな資格名を名乗ったり、法人を作ってその代表を名乗ることで、皆さまの信頼を得ようとし、皆さまの相続に関与しようとします。また、雑誌などにも積極的に出稿し、さも有益なサービスのように見せようとします。

次々出てくる民間資格の数々

「雨後の竹の子」のように発生しつづけている「相続に関する民間資格」の数々。

出願された商標を出願日順に並べたものが下表です【1.2】。

「出願年、民間資格名称(出願人の名称)」の順で表示しています。

 

【1】明らかに司法書士・税理士・弁護士が運営しているものを除きました。

【2】下表に掲載した商標には、正当な目的のもの(当該民間資格で、皆さんの相続手続に関与し、暴利を得ようという目的ではないもの)も含まれていると思います。

2001 相続アドバイザー(特定非営利活動法人相続アドバイザー協会) 
2009

相続法務指導員(株式会社法務研修館)

2010

相続知識検定(株式会社東京アプレイザル)

2011

相続診断士(株式会社I.M.I

相続士(個人)

2012

相続マイスター(株式会社ランドマークエデュケーション)

相続支援コンサルタント(公益財団法人日本賃貸住宅管理協会)

相続鑑定士(株式会社ペガサスデザインセルズ)

公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士(公益財団法人不動産流通推進センター)

2013

相続管理士(株式会社FPグローバルパートナーズ)

相続・遺品業務管理士(特定非営利活動法人日本地主家主協会

公認遺言支援士(一般社団法人日本相続コンサルティング協会)

相続遺言相談士(個人)

遺言執行士(日本遺言執行株式会社)

日本遺言執行士協会(個人)

2014

相続マイスター(株式会社相続ステーション)

相続博士(個人)

相続書士(個人)

相続ファシリテーター(個人)

終活カウンセラー(一般社団法人終活カウンセラー協会)

相続財産診断士(株式会社ファルベ

相続診断士(合同会社あさがお)

相続実務支援士(一般社団法人日本相続コンサルティング協会)

相続コーディネート実務士(一般社団法人相続コーディネート協会)

2015

遺言執行士監督法人(日本遺言執行株式会社)

遺言執行士法人(日本遺言執行株式会社)

遺言執行士組合(日本遺言執行株式会社)

相続書士(個人)

相続保険士(株式会社BizRise)

円満相続遺言支援士(個人)

事業承継アドバイザー(株式会社経済法令研究会) 

2016

相続管理士(個人)

相続支援士(個人)

相続コーディネート実務士(一般社団法人相続コーディネート協会)

円満相続遺言支援士(個人)

相続税管理士(個人)

相続終活専門士(株式会社アレース・ファミリーオフィス)

2017

相続知財鑑定士(有限会社ノア情報センター)

国外相続財産管理士(個人)

2018

相続手続カウンセラー(一般社団法人相続手続カウンセラー協会)

相続財産再鑑定士(個人)

不動産相続士(一般社団法人日本不動産相続協会)

相続専士(株式会社高岡コンサルティングオフィス)

相続手続相談士(一般社団法人中小企業税務経営研究協会)

相続実務士(株式会社夢相続)

証券相続士(個人)

2019

ペット相続士(個人)

円満相続先導士(円満相続コンサルティング株式会社)

相続預貯金手続士(個人)

2020

資産活用実務士(株式会社夢相続)

資産活用実務士(株式会社夢相続)

相続不動産士(株式会社ウルセロ)

不動産相続税理士(マルイシ株式会社)

相続アナリスト(個人)

「親なきあと」財産プランナー(梶野相続サポート&コンサルティング株式会社)

相続ドクター(個人)

相続ドック(個人)

2021

遺言執行コンシェルジュ(個人)

2022

相続士(個人)

相続終活コンダクター(一般社団法人先生ビジネス共同協会)

相続コンシェル(ENGAGEMENT株式会社)

相続診断プロ(株式会社アーバンレック)

遺言コンサルティング指導士(個人)

遺言伝道師(株式会社フレンズスマイル) 

2023

相続プロデューサー(株式会社エスマリーン)

相続デザインコーチ(A-Studio株式会社)

相続デザイナー(個人)

相続マスターズ(一般社団法人OK相続センターおおさか)

2024

信託相続先生(株式会社グッドライフパートナーズ)

不動産借地権相続コンサルタント(合同会社山崎不動産相談室)

相続包括支援センター(一般社団法人相続包括支援センター)

特定相続終活士(個人)

認定相続終活士(個人) 

出願

なし

相続カウンセラー

相続不動産調整士 

相続は国家資格にご相談ください。


相続に関する国家資格「三士業」

◎ 相続に関する国家資格(専門家)は下記三士業です。

司法書士:相続登記の専門家

弁護士:相続紛争の専門家

税理士:相続税の専門家

 

◎ いずれも歴史ある国家資格です。

1872年(明治5年):司法書士(制度創設)

1872年(明治5年):弁護士(制度創設)

1942年(昭和17年):税理士(制度創設、日税連HPより)

 

◎ 国家資格には、国が実施する試験があります。

司法書士:司法書士試験(法務省所管)

弁護士:司法試験(法務省所管)

税理士:税理士試験(国税庁所管)

 

◎ 国家資格には、法律があります。

司法書士:司法書士法、司法書士法施行令、司法書士法施行規則など

弁護士:弁護士法など

税理士:税理士法など

これらの法律では、①当該資格者以外が行なってはいけない業務(独占業務)を定めたり、②当該資格者が守るべきルールが定められています。

民間資格は無資格と同じ

では、民間資格はどうなっているのでしょうか?

× 民間資格には、独占業務がありません。

民間資格には、独占して行なうことができる業務が何一つありません。

民間資格ができることは全て、現行の三資格(司法書士・弁護士・税理士)も行なうことができます。

 

× 民間資格には、歴史がありません。

 

× 民間資格には、国が実施する試験はありません。

「講義を数時間だけ受講して、60分の試験を受ければ、誰でも合格する」ような資格もあります。簡単に誰でも名乗れる民間資格が多いのです。

しっかりした試験がないため、他人の相続に関与して良いだけの知識の裏付けが全くありません。

 

× 民間資格には、規制する法律がありません。

不当な方法で相続に関わろうが、高額な報酬をとろうが、何をやるのも自由です。

 

つまり「民間資格は無資格と同じで、相談する値打ちなど何もない」のです。

国家資格と民間資格の比較(まとめ)

国家資格と民間資格の違いを以下の表にまとめました。

  国家資格 民間資格
根拠

国の法律に基づく

国の実施する資格試験への合格

民間団体の独自基準
認定主体 民間団体
独占業務

あり

司法書士法/弁護士法/税理士法でそれぞれ規定

何もない。
アドバイスの内容

法令や過去の裁判例などに基づくもの。

資格試験合格で培った適正なもの。

国家資格に比べ、圧倒的に知識不足。

十分なアドバイスがもらえない。

アドバイスすること自体が違法なときも。

コスト

・報酬

報酬の自由化がなされた。

ある程度の相場がある。

結局、国家資格に依頼することが必要。

直接、国家資格に頼むのに比べ、「窓口」としてのコストが余分にかかる。

暴利行為

資格の停止等で処罰される。

処罰する仕組みがない。

専門家への規制

司法書士法

弁護士法

税理士法

何もない。

専門家の

倫理観

法律もあり、高い倫理観が求められる。

司法書士法、司法書士倫理

弁護士法、弁護士職務基本規程

税理士法

何もない。

専門家への

クレーム

司法書士:司法書士会、法務局

弁護士:弁護士会

税理士会:税理士会、国税庁

公的な窓口なし

消費者センター

賠償保険

万一の失敗に備え、業務賠償責任保険に加入するのが通常。

民間資格のため業務賠償責任保険がない。

大事なことなので、もう一度言います。

  1. 民間資格は無資格と同じです。
  2. 民間資格に相談する値打ちなど何もありません。
  3. 相談してはいけません。

民間資格が宣伝しているメリットは本当か?


民間資格は、マスコミによく登場します。

マスコミへの露出が多いからといって、真っ当な仕事をしているとは限りません。

 

まず、信用の水増しをします。

  • 自分で民間資格を作り出します。信頼されそうな名前を作って、商標登録します。自分で自分を民間資格第1号として登録します。
  • 少し儲かれば、その儲けで大学教授、司法書士、弁護士、税理士などを役員や顧問に迎えます。
  • 過去にアコギに商売をして、不動産業の業務停止などを受けていても、会社名を変更すれば問題ありません。

 

次に、お金儲けが上手いのも間違いありません。まさに「濡れ手に粟」です。

  • 専門家を紹介するだけ【1】で、相続で困っている皆さんから「コーディネート料として高額報酬」を受け取ります。
  • 紹介した専門家から「紹介料」を受け取ります【2】。
  • 民間資格を取るための有料講座を開始し、受講生から「講座受講料」を受け取ります。
  • 民間資格を認定するために試験制度を設けて、民間資格の受験生から「資格試験受験料」を受け取ります【3】。
  • さらに、有料講座を受講したことを民間資格を受験できる条件にしておけば、「講座受講料」と「資格試験受験料」の両方を取り漏れることもありません。

 

さらに、広告宣伝が上手いのも間違いありません。

  • 「濡れ手に粟」の商法で、荒稼ぎして、儲けを広告費にぶち込みます。
  • 広告費につられた新聞、雑誌等が、民間資格の言ったこと【4】を、無批判に記事として掲載します。
  • テレビが、民間資格を新聞、雑誌等に取り上げられた著名人として、コメントさせます。
  • このようにして、民間資格は、露出頻度を増やし、皆さんの前に頻繁に登場します。
  • そして、新聞、雑誌、テレビも取り上げているから信用できると誤信した皆さんが相談なさいます。
  • (最初に戻る)

 

いかに信用の水増しをしようが、お金儲けが上手かろうが、広告宣伝が上手かろうが、皆さんに民間資格を利用するメリットがあれば問題ないかもしれません。

民間資格が宣伝しているメリットは本当に存在するのでしょうか?


【1】司法書士は、弁護士や税理士を異業種交流会などで探し、優秀と思えば実績を判例検索などで検索してご紹介しています。紹介しただけで、皆さまや他の専門家からお金をいただくこともありません。これは弁護士や税理士であっても同様です。

【2】国家資格のうち司法書士、弁護士は、紹介料の支払い、受け取りともに法律で禁止されています。

【3】自分で作って、自分が第一号として登録した民間資格名が広がれば、自分の権威も上がります。本当に恐ろしいスキームです。

【4】民間資格のアドバイスの中には、多数の嘘や間違い、実務で通用しないものが含まれます。何ら責任を負わない民間資格者の言うことを信用してはいけません。

民間資格の言う「(民間資格による)適切な国家資格のコーディネート」は不要。

民間資格は、国家資格(司法書士、弁護士、税理士)をコーディネートする(協働する)と、宣伝しています。

「相続について相談したいと思っても、例えば、司法書士に頼むべきか、弁護士に頼むべきなのか、税理士なのか、と悩むことも多いはず。そうした場合に、民間資格保有者を『とりあえずの窓口』として頼ってください」

 

はっきり言って全く無意味です。

司法書士、弁護士、税理士いずれも他の国家資格と協同しています。

国家資格が、皆さんに対して別の国家資格を紹介するときでも、国家資格は皆さんから紹介料を受け取ることは有りません。

国家資格同士で紹介料の授受をすることもありません。

ところで、後に述べる理由から、私たち国家資格は、民間資格のことが大嫌いです。

したがって、キッチリした国家資格は、民間資格などと協同しません。

よって、民間資格が、皆さんに対して国家資格を紹介する場合でも、紹介された国家資格は、イマイチかもしれません。


 

国家資格が民間資格を嫌う「8つの理由」

  1. 相続。それは、私たち司法書士、弁護士、税理士の仕事です。
  2. 司法書士は、司法書士以外の者が相続登記に関与することで、実体を伴わない登記が出現することを予防しています。
  3. 弁護士は、弁護士以外の者が相続紛争に関与することで、紛争がより複雑化することを予防しています。
  4. 税理士は、税理士以外の者が相続税に関与することで、複雑な相続税の無申告、過小納税、過多納税などの発生を予防しています。
  5. 私たち国家資格はいずれも、とても厳しい国家試験に合格したため、その能力を保障され、皆さんのために相続手続を遂行することを許されているのです。
  6. 民間資格が、宣伝することで、皆さんは、どこに相談すれば良いか、余計に分からなくなります。
  7. 民間資格が、皆さんに間違った情報を伝えることで、国家資格が間違った情報を否定するために、余計な手間を要しています。
  8. 国家資格は「民間資格が、何の価値もないサービスを、法律の規制なく高い報酬をとって行なった結果、被害者が出ている」ことが許しがたいのです。

よって、皆さんが、民間資格に相談や依頼をするメリットは「何一つない」と断言できます。

民間資格の言う「司法書士は、分割方法や方向性が決まっていないと受けてくれない」は大嘘。

晩婚化、少子化の影響で、他の相続人の顔を知らない方からの相続手続きのご相談、ご依頼も増えています。

このような場合には、当然、分割方法や方向性は決まっていませんが、司法書士はお受けします。

 

司法書士にご相談いただくと、まずは、皆さんから他の相続人に対して、丁寧なお手紙を書いていただくところからスタートします。

丁寧なお手紙を無視された場合には、司法書士は遺産分割調停申立書の作成を通じて皆さまをご支援できるほか、相続に強い弁護士をご紹介することも可能です。

分割方法や方向性が決まっていない場合において相続税が課税されそうなときや、相続不動産を売却予定のときには、相続税に強い税理士にもアドバイスを求めながら遺産分割協議を進めていきます。

 

民間資格の言う「司法書士は受けない」は、大嘘なのです。

国家資格に「直接」相談や依頼をした場合

司法書士のところに直接ご相談にお越しになれば、たとえ一流の税理士や弁護士を紹介しても「コーディネート費用33万円~」等の費用は一切かかりません。

司法書士の選任や手配にも、一切費用はかかりません。

まとめ

相続手続きにおいて、民間資格へご相談やご依頼は、無価値なサービスに対して、高額な報酬を支払うことを意味します。

民間資格を取得しようという方へ


「日本の相続市場は〇〇兆円」こんな見出しが新聞に並ぶようになってから「あなたも『〇〇士』の資格をとって、儲けましょう」という趣旨で、皆さんを勧誘する民間資格や民間業者が増えてきました。しかし、この記事をご覧いただいた方は、最早「民間資格」を取得しようとは思わないと思います。箇条書きでまとめます。

  • 民間資格には、独占業務がありませんので、無資格と同じです。
  • 民間資格による民間資格取得の勧誘は、資格商法(悪質商法の一種)かもしれません。
  • 民間資格は、相談者を混乱させ、被害を出しても放置なので、国家資格から憎まれています。
  • 自分の一番大切な人に受けさせたくないことを仕事にしてはいけません。
  • 怪しげな民間資格を取得して、時間を無駄になさらないようご注意ください。

民間資格から協力要請された国家資格の先生方へ


非弁提携、非司提携、非税提携になる可能性があります。

そして、提携は、専門家士業として最も恥ずべき懲戒事由の一つです。

彼らと提携すること(提携先として名前が載ってしまうこと)は、自らに集客力がないことを自認しているに等しいからです。