相続人は誰か❷数次相続・再転相続・代襲相続の区別


法律を勉強したことがある方でも間違える「数次相続」と「代襲相続」の違い。

まして「再転相続」なんて聞いたこともない。

そういう方に向けて、分かりやすく記事にしました。

もくじ
  1. 数次相続・再転相続・代襲相続
  2. 代襲相続人になるための要件
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数次相続・再転相続・代襲相続


〔事例〕

祖父Aー父Bー子C

という関係において・・・AとBの死亡の順序によって、まず二通り(数次相続と代襲相続)に分かれます。

数次相続

祖父Aが死亡後、遺産分割をしないうちに父Bが死亡した場合、Cは祖父Aの相続権を有します。

CはBが持っていたAの遺産分割協議に参加する資格を相続したと考えます。

父Bに妻が居れば、妻も父Bの相続人ですから、父Bが持っていたAの遺産分割協議に参加する資格を相続しています。

祖父A ーーーーーー 父B ーーーーー 子C
➊死亡     ➋死亡    

これを数次相続といいます。

代襲相続

祖父Aよりも先に父Bが死亡した場合、Cは祖父Aの相続権を有します。

何故、CがAの相続人となり得るかといいますと、法律の規定がある(民法第887条2項)からです。

このとき父Bに妻が居たとしても、妻が祖父Aの相続権を有することはありません。法律の規定がないからです。

祖父A ーーーーーー 父B ーーーーー 子C
  ➋死亡    ➊死亡    

これを代襲相続といいます(民887Ⅱ)。

再転相続

(広義の)数次相続の一種。

ただし、再転相続は、Aの死亡後の熟慮期間中にBが死亡した点で(狭義の)数次相続と異なります。

祖父A ーーーーーー 父B ーーーーー 子C
➊死亡    

➋A死後、3か月以内にB死亡

   

数次相続と再転相続は民法916条の適用があるか否かの違いがあります。

民法第916条
   相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間(筆者注:相続の承認放棄のための3か月の熟慮期間のこと。)は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

数次相続の場合の子Cには、民法916条の適用はありません。父Bが祖父Aの相続を単純承認しているのですから、子Cは父Bの相続を単純承認した地位を承継しているためです。

一方、再転相続の場合の子Cには、民法916条の適用があります。父Bが祖父Aの相続を承認するか放棄するか迷っているうちに死んだということですから、子Cは父Bの持っている迷う権利を承継しているためです。

 

これらを図にすると、次のとおりです。

  (広義の)数次相続
  (狭義の)数次相続 再転相続
死亡の順序

A→B

A→B
死亡のタイミング

A死後、熟慮期間経過後、B死亡

A死後、熟慮期間中、B死亡
民法916条の適用

適用なし

適用あり

代襲相続人になるための要件


被代襲者(上の事例ではB)が相続放棄以外の理由で相続権を失ったこと。

  1. 被代襲者Bが相続人から廃除された場合→CがBを代襲相続できる原因となる。
  2. 被代襲者Bが相続欠格に該当した場合→CがBを代襲相続の開始原因となる。
  3. 受遺者Bが遺言者Aより先に死亡した場合→代襲遺贈というのはないため、Aの法定相続人全員による相続(遺産分割協議の対象)となる。
  4. 同時に死亡した親子間では相続は開始しないが、孫以下の直系卑属は代襲相続人となる(昭和37年6月15日民事甲第1606号)。

被相続人の直系又は傍系卑属でなければならない。

 

養親よりも先に亡くなった養子に①養子縁組前に出生した子と②縁組後に出生した子がある場合、養親の相続人は、縁組後に出生した子のみです(昭和11年5月11日民事甲第513号、昭和30年10月26日民事甲第2234号)。

∵縁組前に出生した養子の子と養親との間には親族関係は生じていないからです。

養親A 

❺死亡 

ーーーーーー

❷養子縁組 

養子B

❹死亡

ーーーーー 

 

養子の子C

❶出生

CはAの相続人ではない。

養子の子D

❸出生

DはAの相続人となる。

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