相続生命保険の調査


相続人であれば、他の相続人が受取人に指定された生命保険金を調査することも可能です。

ただし、受取人が保険金の支払請求をするまでに、急いで手続きすることが必要です。

この記事では、相続財産調査で欠かすことのできない生命保険の調査について解説しています。

もくじ
  1. なぜ生命保険の調査が必要なのか?
  2. 生命保険の調査方法
  3. 生命保険の調査は、なるべく早く
  4. 生命保険の特殊性
    1. 相続財産ではない(遺産分割協議の対象にならない)
    2. 相続税の算定基礎財産に含まれる(みなし相続財産)
    3. 相続税の控除枠がある
    4. 特別受益の類推適用
  5. 司法書士の報酬・費用
  6. 人気の関連ページ

なぜ生命保険の調査が必要なのか


生命保険金は、受取人が指定されている場合には、その方固有の財産となり、遺産分割協議の対象になりません。

ただし、みなし相続財産として、その一部が相続税の対象になりますので、受取人に指定されていない相続人であっても、把握しておく必要があります。

生命保険の調査方法


これまでは、生命保険を調査するためには、個々の生命保険会社に対して、個別に照会状を送付する必要がありました。

令和3年7月6日以降は、次の方法で調査できます(5ステップです。)。

  1. まず生命保険協会に照会します。
  2. 生命保険協会が提出書類をチェックします。
  3. 生命保険協会から手数料(3000円)の支払い案内があります。
  4. 生命保険協会から回答書が届きます。
  5. 各生命保険会社に対して照会します。

一つずつ、詳しく説明します。

1.まず生命保険協会に照会します。

一般社団法人生命保険協会に照会します。

遺言執行者又はその任意代理人、法定相続人の法定代理人又は任意代理人からの照会も可能です。

任意代理人は、弁護士・司法書士・行政書士に限られます。

【方法】

書面またはインターネットによる方法がありますが、インターネットが簡単です。

◎インターネット(Webフォーム)による申請の場合

  1. 一般社団法人生命保険協会HP「生命保険契約照会制度のご案内」で注意事項を確認
  2. 一般社団法人生命保険協会HP「同意事項・照会者要件の確認」で同意したうえ、照会者身分を選択すると、照会者身分に応じた「必要書類案内」ページに移動します。
  3. 「必要書類案内」ページで、必要書類を確認します。
  4. 「必要書類案内」ページの「申請を行う。」をクリックすると、「申請方法の選択」ページに移動します。
  5. 「申請方法の選択」ページで「1.Webフォームから申請する。」をクリックします。
  6. 「生命保険契約照会制度 ログインページ」が開きますので、「新規ユーザ登録」をクリックして進めます。

◎書面による申請の場合

  1. 一般社団法人生命保険協会HP「生命保険契約照会制度のご案内」で注意事項を確認
  2. 一般社団法人生命保険協会HP「同意事項・照会者要件の確認」で同意したうえ、照会者身分を選択すると、照会者身分に応じた「必要書類案内」ページに移動します。
  3. 「必要書類案内」ページで、必要書類を確認します。
  4. 「必要書類案内」ページの「申請を行う。」をクリックすると、「申請方法の選択」ページに移動します。
  5. 「申請方法の選択」ページで「2.Webフォームから書面申請の申請書を取り寄せ、書面にて申請する。」をクリックします。
  6. 案内どおり進めます。

【回答までの期間】

生命保険協会が回答をくれるまでに要する時間は、照会から約1か月間です。

【同封する書類】

上記【方法】の「3.『必要書類案内』ページ」に記載されている通りですが、次のような書類です。

  1. 照会者の本人確認書類
  2. 法定相続情報一覧図

<照会書みほん>
参考のために提示します。
実際に照会する際には、必ず最新版を上記URLからダウンロードしてご利用ください。

2.生命保険協会が提出書類をチェックします。

提出した書類を生命保険協会がチェックし、不足があれば、1週間から10日ほどで連絡があります。

3.生命保険協会から手数料(3000円)の支払い案内があります。

生命保険協会の書類チェック後、問題がなければ手数料の請求があります。

支払わないと、協会から各社への照会が滞ります。

コンビニ支払い又はクレジット支払いを選択できます。

 

4.生命保険協会から回答書が届きます。

生命保険協会は、生命保険会社名ごとに生命保険の有無の情報を開示してくれます。

ただし、以下の注意事項がございます。

  1. 協会が照会を受け付けた日現在有効に継続している個人保険(照会事由が死亡の場合は、照会対象者様の死亡日現在に継続している個人保険) を対象としています。開示請求時点で生命保険金が支払われている場合には開示対象外です。
  2. 財形保険契約および財形年金保険契約、支払いが開始した年金保険契約、保険金等が据え置きとなっている保険契約は開示対象外です。

<回答書見本>

一般社団法人生命保険協会に対する生命保険現存照会の結果、送付されてきた「照会結果のご回答について」
一般社団法人生命保険協会に対する生命保険現存照会の結果、送付されてきた「照会結果のご回答について」

5.各生命保険会社に対して照会します。

生命保険協会が「有」と回答した生命保険会社各社に対して、照会状を送ります。生命保険協会の回答で「○(有)」と回答のあった保険会社に対して、照会状を送ります。

【照会状に同封すべき書類】

照会状には、次の書類を同封します。

  • 法定相続情報証明書
  • 照会する方の本人確認書類の写し
  • 返信用封筒

生命保険の調査は、なるべく早く


  • 生命保険は、保険金受取人に指定された方が単独で、解約手続をすることができます。
  • また、一般社団法人生命保険協会の「照会結果のご回答について」の下にある<注意事項>の2つ目には「照会受付日現在有効に継続している個人保険を対象としていますが、死亡保険金支払済、解約済、失効等であるものは記載していません。」と記載されています。保険金受取済みのものは記載されないのです。

したがって、保険金受取人が保険金受取または解約手続を始める前に【なるべく早く】照会する必要があります。

生命保険の特殊性


相続財産ではない(遺産分割協議の対象にならない)

生命保険金は、受取人が指定されている場合には、受取人固有の財産となり、遺産分割協議の対象ではありません。

 

相続税の算定基礎財産に含まれる(みなし相続財産)

ただし、相続税法上は、みなし相続財産として、その一部が相続税の対象になります(相続税法3Ⅰ①)ので、受取人に指定されていない相続人も、把握しておく必要があります。

 

相続税の控除枠がある

被相続人の死亡により取得した生命保険金のうち500万円に法定相続人の数を乗じた金額を控除した残額が課税対象となります(相続税法12Ⅰ⑤)。

 

特別受益を類推適用して、持戻し対象となることもある。

相続人の中に、被相続人から遺贈や贈与を受けた者があるときは、その方の相続分は少なくなります(特別受益者。民法903条)。

生命保険金は、特別受益を算定する場合の財産には当たりません。

民法上、生命保険金が遺産にならないといっても、遺産総額と比べて、大きすぎる生命保険金であれば、相続人の不公平感は拭えません。

そこで、最高裁平成16年10月29日判決は「被相続人を保険契約者及び被保険者とし、共同相続人の一人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率、保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、特別受益に準じて持戻しの対象となる。」と判示しました。

どれぐらいであれば、到底是認することができないほどに著しいものであると評価されるのかについては下級審裁判例が出ていますが、その分析はまた別の機会に。

司法書士の報酬・費用


業務の種類 司法書士の報酬・手数料 実費

戸籍

収集

親子間のご相続 11,000円(税込)~ 3,000円~
兄弟間のご相続 22,000円(税込)~ 5,000円~
お子様のない夫婦間の相続 22,000円(税込)~ 5,000円~
相続関係説明図作成 33,000円(税込)~【1】 0円
相続関係説明図を法務局に提出し法定相続情報証明書 11,000円(税込)~ 1,040円

(生命保険協会に対する)

生命保険の有無照会

11,000円(税込)

4,000円ほど

(個別保険会社に対する)

生命保険の内容照会

22,000円(税込)/社【2】

郵送費など

合計【親子間相続の場合】 88,000円(税込) 8,000円~

【1】下記いずれか高い方の金額で算出いたします。

  • 相続人中にお亡くなりになった方がいらっしゃる場合、お一人につき33,000円を加算します。
  • 相続人が3名様を超える場合、相続人お一人につき11,000円を加算します。

【2】保険解約手続きもあわせてご依頼いただいた場合には、保険内容照会から解約までを55,000円(税込)/社で承ります。

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