自筆の遺言が出てきたけれど・・・どう解釈して良いか、分らないとき
遺言が出てきたけれど・・・どうすれば良いか、分らないとき
遺言で遺言執行者に指名されてるけれど、何をすればよいのかよく分からないとき・・・
当司法書士事務所グループにお任せください!
当グループが「遺言の解釈」と「遺言執行のお手伝い」を行ないます!
もくじ | |
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法律にはハッキリと記載されていませんが、判例によると次のようなルールに基づいて解釈を行なうことになります。
遺言書の記載自体から遺言者の意思が合理的に解釈できるか? | ||
▼ | ||
できる場合 |
できない場合 |
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▼ |
▼ |
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遺言書に表れていない事情をもって、遺言の意思解釈の根拠とすることは許されない(最判平13.3.13)。 |
遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である(最判昭58.3.18)。 |
意思表示の内容は当事者の真意を合理的に探究し、できるかぎり適法有効なものとして解釈すべきを本旨とし、遺言についてもこれと異なる解釈をとるべき理由は認められない(最判昭30.5.10民集9巻6号657頁)。 |
【1】最判昭30.5.10は続けて「原審が本件遺言書中の『後相続は谷端まち子にさせるつもりなり』『一切の財産は谷端まち子にゆずる』の文言を谷端まち子に対する遺贈の趣旨と解し、養女下田年江に『後を継す事は出来ないから離縁をしたい』の文言を相続人廃除の趣旨と解したのは相当であつて、誤りがあるとは認められず、また遺言の真意が不明確であるともいえないから、所論は理由がない。」と判示している。
(実務家も迷う遺言相続の難事件・事例式解決への戦略的道しるべ/遺言・相続実務問題研究会編集/野口大弁護士・藤井伸介弁護士編集代表/新日本法規/令和3年/117p以下「Case9遺言の文言から受遺者ないし受益の相続人を特定することが困難な場合」を参照。)
一般的に「まかせる」という表現には、次の二つの意味合いがあります。一つ目は「管理を委ねる」という意味であり、二つ目は「処分を委ねる」という意味です。二つ目の「処分を委ねる」は「自由に処分してよい」という意味ですから「遺贈」と読むことが可能です。
したがって、単に「まかせる」では、遺言書の記載自体から遺言者の意思が合理的に解釈できません。よって、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべき(最判昭和58.3.18)ことになります。 裁判例では、「状況」を次のように認定し、「まかせる」の意味を解釈しています。
事件 | 判断 | 遺言書内容 | 認定された状況 |
H25.9.5 大阪高裁判決
原告:受遺者X 被告:銀行 補助参加人:三女 |
遺産全部をXに包括遺贈する趣旨 |
自筆証書遺言で「私が亡くなったら財産については私の世話をしてくれた長女のXに全て任せますのでよろしくお願いします。」 |
①Xは遺言者の長女。 他の相続人は妻、二女、三女、長男の代襲相続人2名(補助参加したのは三女のみ) ②特養入所中の遺言者の世話は専らXが行った。 ③遺言者夫婦と三女は同居していたが喧嘩後別居し、以降ほぼ訪問せず。他の相続人も年2~3回しか訪問せず。 ④遺言者は生前Xに郵貯解約等手続を委任した。 ⑤遺言者は生前Xに700万円も生前贈与した。 |
上記原審 H25.3.22大阪地裁堺支部 |
包括遺贈否定。 遺産状況を最もよく把握しているXに遺産分割手続を中心になって行うよう委ねる趣旨 |
同上 |
①~⑤同旨 ⑥遺言者が以前書いた遺言では「相続させる」と書いていた。 ⑦遺言者の以前の遺言では妻を気遣っていたが、原告の主張通りだと妻に対する気遣いがない。 |
S61.6.18東京高裁判決
原告:一人娘 被告:受遺者の意を受けた遺言執行者 |
包括遺贈否定。 |
自筆証書遺言で「木和田友子に財産を全部任せる」 木和田友子が遺言執行者選任 一人娘である相続人が遺言執行者を提訴
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①遺言者と木和田友子は同居も婚姻もせず 他に一人娘が相続人。 ②遺言者は木和田友子に対して結婚を申し込んだが、入籍していない。 ③木和田友子は時折遺言者のもとを訪れて身辺の世話をするに留まる。 ④以前作成した遺言に比べて粗末なメモ書き体裁で、書き直す時間があったのに正式に書き直していない。 ⑤一人娘と全くの断絶状態にあった訳ではない。 |
H9.8.6 東京高裁決定 (遺言執行者選任申立事件) |
遺産一切を妻の自由処分にまかせ同人に包括的に遺贈する趣旨と解することもできないではない・・・本件遺言は一見明白に無効とは言い難く、別途訴訟手続でその効力を確定すべき |
「遺産相続については、一切妻にまかせる」 |
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上記原審 H9.3.10横浜家裁 (遺言執行者選任申立事件) |
委託の内容が包括的白紙的で具体性に欠けるので、遺言は無効 |
同上 |
「まかせる」遺言の解釈については(野口大・藤井伸介〔編集代表〕/遺言・相続実務問題研究会〔編〕/実務家も迷う遺言相続の難事件・事例式解決への戦略的道しるべ/新日本法規/令和3/240頁以下/Case19)も参照。
裁判所の判例と、登記所の先例によって、次のとおりの解釈ルールが確定されています。
❶遺言書に「遺贈する」旨の文言が使用されている場合
相続人全員に対して | 相続人の一部に対して | |
包括的な遺贈 | 相続を登記原因とする【1】 | 遺贈を登記原因とする【2】 |
特定財産について遺贈 | 遺贈を登記原因とする【3】 | 遺贈を登記原因とする【4】 |
具体例は次のとおりです。
【1】「相続人の全員である甲乙に、私の全財産を均分で遺贈する」の場合は、相続登記をする。∵相続分の指定である。
【2】甲乙のみが相続人である場合に「相続人の中の甲に、私の全財産を遺贈する」
【3】甲乙のみが相続人である場合に「甲にはA不動産、乙にはB不動産を遺贈する」
【4】甲乙のみが相続人である場合に「相続人の中の甲に、A土地を遺贈する」
【5】「私の全財産の2分の1を相続人中の甲乙に贈与し、残余については法定相続で相続する」という場合には「遺贈登記」をする。
【6】「A土地を売却してその代金を甲に遺贈する」の場合には、相続登記をする。∵清算型遺贈であるため。
❷遺言書に「相続させる」旨の文言が使用されている場合
1.「相続人中の甲に、A土地を相続させる」相続登記をする。∵遺産分割方法の指定
2.「相続人中の甲に、私の全財産を相続させる」相続登記をする。∵相続分の指定
3.「私の全財産を孫に相続させる」とあって、被相続人の子が生存している場合には「遺贈登記」をする。∵子が生存しているときには孫には相続権がない。そして相続権がない者に「相続」の登記原因は使えない。
❸遺言書に「その他の文言」が使用されている場合
1.「A土地は相続人中、甲のものとする」「甲が取得する」「甲の名義にする」は相続登記をする。
2.「私の全財産は妻に渡す」「妻に譲渡する」遺贈登記をする(登記研究512)
3.「次のとおり遺産分割方法を指定する。長男A土地、二男B土地。以上」は相続登記をする。
4.「贈与する」とあるときは「遺贈」登記をする(登記研究429質疑応答6323)。
遺言を解釈した結果 | ||
特定遺贈 | 相続登記 | |
遺言執行者選任手続 | 相続人全員の協力がない場合には遺言執行者選任申立が必要 | 不要 |
登記手続 |
登記権利者=受遺者 登記義務者=相続人全員(又は遺言執行者) ▼令和5.4.1改正不登法63Ⅲ 受遺者が相続人のときは、受遺者の単独申請 受遺者が相続人以外のときは、従来どおり |
受益相続人の単独申請(他の相続人の協力不要) 令和元年7月1日以降に作成された遺言の場合には遺言執行者単独申請も可能 |
登録免許税 |
20/1000 但し、登記権利者が相続人のときは4/1000 |
4/1000 |
当該不動産が欲しくないときの相続人の対応 | 特定遺贈の放棄をすることで、当該不動産のみを放棄できる。 | 家庭裁判所への相続放棄申述が必要となり、他の遺産も相続できない。 |
遺言者が特定の相続人に対して「不要な不動産を押し付けたい」ときには、どちらに解釈されるようにすると良いか?! | × | 〇押しつけた相続人には恨まれますが・・・ |
被相続人が遺言で「ある相続人の廃除を希望している」かのような言葉を遺していた場合には、残された相続人(または遺言執行者)が「遺言書の文言」を解釈して、廃除の申立をすべきか決定する必要があります。さらに、遺言書の内容によっては関係者から事情をお伺いする必要もあります。
遺言書の文言(相続人はAとB) | 廃除申立の要否(Bに対する) |
Bを相続人から廃除する。 | 要 |
全財産をAに相続させる。 (Bを廃除するとの文言はなし) |
不可 ∵単なる遺産分割方法の指定 |
Bには遺産を一切受け取らせない。 (Bを廃除するとの文言はなし)
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△ ∵遺言が「遺産分割方法の指定」か「相続人廃除」か、遺言の記載だけでは合理的に解釈できない。 ▼ 遺言書解釈に関する最判S58.3.18 遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探求し当該条項の趣旨を確定すべき |
Bは・・・冷酷な振舞を続けているので養子としての実がない。Bとは養子離縁したい。Bには遺産を一切受け取らせない。 (Bを廃除するとの文言はなし) |
要 ∵相続権を発生すべき基本的部分関係の解消の意思が表示されている。
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男と逃げるとは許せない。 (Bを廃除するとの文言はなし)
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「許せない」とはどういうことか、合理的には解釈できない。 ▼ 遺言書解釈に関する最判S58.3.18 ▼ 遺言書作成当時の事情:従業員と駆け落ちした妻に対して作成した遺言 ▼ 廃除申立て必要 |
一円の金もやれないし、うちの物や退職金などには指一本触れさせへん。 (Bを廃除するとの文言はなし)
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遺言が「遺産分割方法の指定」か「相続人廃除」か、遺言の記載だけでは合理的に解釈できない。 ▼ 遺言書解釈に関する最判S58.3.18 ▼ 遺言書作成当時の事情:親族との折り合いが悪く、心身共に極度に疲労し、事実上夫婦としての結びつきが破綻に瀕していた ▼ 廃除申立て必要 |
次のような遺言がある場合、どのように解釈するべきか?
なお、Bは相続人資格のない第三者であるとする。
自宅は当分の間、Aに使用させる。Aが転居する時は、Bに譲ること(相続させる)。 |
考えられる選択肢と当否は、次のとおり
選択肢 | その当否 |
自宅土地建物の所有権をAに取得させるが、Aが転居するときには、その所有権をBに取得させる。(後継ぎ遺贈) |
× Bに対しては(相続させる)との文言を使っているのに、Aには使っていない。 また、後継ぎ遺贈の有効性には疑問がある(再犯S58.3.18)。 |
自宅の土地建物についてはAが転居するまでの間は、Aに使用貸借させるが、Aが転居する時にはAに遺贈する。(停止条件付き遺贈) |
× 条件成就の時期が定かでないにもかかわらず条件成就までの間の所有権の帰属が定まらない状態は好ましくない。 |
遺言の効力発生と同時に自宅土地建物についてはBに遺贈するが、Aに使用させる負担付遺贈である。 |
○ 使用貸借という負担付遺贈であると理解すれば所有権の帰属に関する不安定さを回避できる。 |
「使用させる」遺言の出題及び解説について、野口大・藤井伸介〔編集代表〕/遺言・相続実務問題研究会〔編集〕/実務家も迷う遺言相続の難事件・事例式解決への戦略的道しるべ/新日本法規/R3/181頁を参照。
当グループの司法書士を遺言執行者にご指名された場合、相続開始後の流れは次のとおりです。
遺言書をお預かりする際に、将来、遺言をなさった方が亡くなったとき、責任をもって、司法書士にご連絡いただく担当のご家族様を指定いただきます。
(生前のうちに)遺言公正証書の正本をお預かりします。
(生前のうちに)司法書士から遺言者・連絡担当者に定期的に連絡をとり、財産や相続人などに変更・異動がないかお伺いします。
司法書士が遺言者がお亡くなりになったことを知ります。
相続人・受遺者の方々へ司法書士が遺言執行者に就任した旨をご連絡いたします。
就任承諾通知は、法律上の義務ではありませんが、次の条文には注意が必要です。
民法1007条(遺言執行者の任務の開始)
1 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。 2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。 |
遺言執行の対象となる相続財産目録を、調査未了であることを明示して、添付します。
∵ 処分制限効が及ぶ範囲を相続人に通知するためです(民法1013)。
また遺留分侵害額請求権の消滅時効の起算点となり得ますので、遺言執行者が送付した書類を各相続人が受領した日を後日証明できるようにしておきます。この点、郵便局の取扱いの変更などで後日証明書の発行が得られなくなることもありますので、プリントアウトして保管しておきます。
添付書類 | 回答内容 | |
(公証役場への) 保管公正証書有無の確認 ファックスでの照会OK |
死亡がわかる戸籍 相続人であることがわかる戸籍 相続人の住民票 (委任状・相続人の印鑑証明書) |
遺言保管の有無 |
(公証役場への) 保管公正証書の謄本の請求 出頭必要 |
同上 | 謄本の交付 |
(法務局への) 遺言書保管事実証明書の交付請求 郵送請求OK(返信用封筒必要) |
死亡がわかる戸籍 相続人であることがわかる戸籍 相続人の住民票 |
遺言保管の有無 |
(法務局への) 遺言書情報証明書の交付請求 |
出生から死亡までの戸籍 相続人の戸籍・住民票 ∵全相続人に通知するため |
遺言内容 |
一見矛盾するようでも矛盾しない解釈を模索します。
出来る限り、執行者の解釈を示します。
見解の相違を解消できないときには、訴訟を提起します。
相続承認・放棄の熟慮期間経過を待って、名義変更などをすすめます。
なお、相続財産に債務超過の可能性がある場合には、債務額確定まで財産権の移転はすべきではありません。
報酬基準以外の特別な執行行為を行った場合には、加算をお願いすることもございます。
協議が出来ない場合には、家裁へ報酬付与申立をします。
相続人様への分配と遺言執行費用・報酬の受領は同時履行になります(民法1018Ⅱ→民法648の2)
遺言執行報酬をご負担いただくのは、次のとおりです。
原則 | 相続財産(民法1021本文) |
特定遺贈 | 相続人(相続人は遺贈義務者でもあります。) |
全部包括遺贈 | 受遺者 |
遺留分侵害遺言 | 受遺者又は受益相続人(民法1021但書) |
相続人に遺言執行が完了した旨を報告します。
【ご注意】 「公正証書遺言があれば、検認手続も遺産分割協議も不要だからこっそり名義変更できる」という説明は間違いです!
「公正証書遺言があれば、検認手続も、遺産分割協議もする必要がないため、全相続人に遺言内容を知られないで、こっそり名義変更できます。」という説明が、専門家によって、なされることがありますが、間違いです。
公正証書遺言であっても、遺言があることを全相続人に通知する必要があります。そして、この通知を怠ったときには、遺言書隠匿に該当し、相続欠格(相続する権利を失うこと)になることもあります(民法891⑤)。
事案によります。
場面 | 司法書士報酬 |
司法書士が遺言執行者の場合の遺言執行報酬 |
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遺言執行に関するご相談 | 30分5,500円(税込) |
遺言執行のお手伝い |
名義変更する財産の種類により、異なります。 遺産整理業務報酬をご覧下さい。 |
【1】遺言書作成から関与させていただいた場合、遺言書に記載いただく報酬金額は次のとおりです。
相続する財産の額【2】 | 司法書士報酬 |
300万円以下の場合 | 330,000円(税込) |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 2.2%+264,000円(税込) |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 1.1%+594,000円(税込) |
3億円を超える場合 | 0.55%+2,244,000円(税込) |
【2】相続する財産の額は、次のとおり算定します。
不動産 |
原則:固定資産評価額 例外:不動産を売却して売却代金を相続人にお渡しする(いわゆる「清算型遺贈」)の場合は、売却できた金額を相続する財産の額として計算します。 |
預金 | 預貯金の額 |
負債 | 遺言執行の対象ではないので、含みません。 |
法律には、ハッキリと記載されていませんが、判例によって、次のようなルールに基づき、解釈を行ないます。(平成29年4月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)
遺言書の記載自体から遺言者の意思が合理的に解釈 | |
▼ 出来る ▼ |
▼ 出来ない ▼ |
遺言書に表れていない事情をもって、遺言の意思解釈の根拠とすることは許されない(最判平13.3.13)。 |
遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である(最判昭58.3.18)。 |
「まかせる」では、遺言書の記載自体から遺言者の意思が合理的に解釈できません。よって、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべき(最判昭和58.3.18。上記Q&A参照)ことになります。 裁判例では、「状況」を次のように認定し、「まかせる」の意味を解釈しています。
(平成29年6月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)
事件 | 判断 | 遺言書内容 | 認定された状況 |
H25.9.5 大阪高裁判決
原告:受遺者X 被告:銀行 補助参加人:三女 |
遺産全部をXに包括遺贈する趣旨 |
自筆証書遺言で、「私が亡くなったら財産については私の世話をしてくれた長女のXに全て任せますのでよろしくお願いします。」 |
①Xは遺言者の長女 他の相続人は妻、二女、三女、長男の代襲相続人2名 補助参加したのは三女のみ ②特養入所中の遺言者の世話は専らXが行っていた ③遺言者夫婦と三女は同居していたが喧嘩後別居し、以降ほぼ訪問せず 他の相続人も年2~3回しか訪問せず ④遺言者は生前Xに郵貯解約等手続を委任した ⑤遺言者は生前Xに700万円も生前贈与した |
上記原審 H25.3.22大阪地裁堺支部 |
包括遺贈否定。 遺産状況を最もよく把握しているXに遺産分割手続を中心になって行うよう委ねる趣旨 |
同上 |
①~⑤同旨 ⑥遺言者が以前書いた遺言では「相続させる」と書いていた。 ⑦遺言者が以前書いた遺言では妻を気遣っていたが、原告の主張通りだと妻に対する気遣いがない |
S61.6.18東京高裁判決
原告:一人娘 被告:受遺者の意を受けた遺言執行者 |
包括遺贈否定。 |
自筆証書遺言で、「木和田友子に財産を全部任せる」 木和田友子が遺言執行者選任 一人娘である相続人が遺言執行者を提訴
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①遺言者と木和田友子は同居も婚姻もせず 他に一人娘が相続人。 ②遺言者は木和田友子に対して結婚を申し込んだが、入籍していない。 ③木和田友子は時折遺言者のもとを訪れて身辺の世話をするに留まる。 ④以前作成した遺言に比べて粗末なメモ書き体裁で、書き直す時間があったのに正式に書き直していない。 ⑤一人娘と全くの断絶状態にあった訳ではない。 |
H9.8.6 東京高裁決定 (遺言執行者選任申立事件) |
遺産一切を妻の自由処分にまかせ同人に包括的に遺贈する趣旨と解することもできないではない・・・本件遺言は一見明白に無効とは言い難く、別途訴訟手続でその効力を確定すべき |
「遺産相続については、一切妻にまかせる」 |
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上記原審 (遺言執行者選任申立事件) |
委託の内容が包括的白紙的で具体性に欠けるので、遺言は無効 |
同上 |
次のように考えます。遺言書の文言によっては関係者から事情を聴取する必要もあります。
遺言書の文言(相続人はAとB) | 廃除請求の要否(Bに対する) |
Bを相続人から廃除する。 | 要 |
全財産をAに相続させる。 (Bを廃除するとの文言はなし) |
不可 ∵単なる遺産分割方法の指定 |
Bには遺産を一切受け取らせない。 (Bを廃除するとの文言はなし)
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△ ∵遺言が「遺産分割方法の指定」か「相続人廃除」か、遺言の記載だけでは合理的に解釈できない。 ▼ 遺言書解釈に関する最判S58.3.18 遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探求し当該条項の趣旨を確定すべき |
Bは・・・冷酷な振舞を続けているので養子としての実がない。Bとは養子離縁したい。Bには遺産を一切受け取らせない。 (Bを廃除するとの文言はなし) |
要 ∵相続権を発生すべき基本的部分関係の解消の意思が表示されている。
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男と逃げるとは許せない。 (Bを廃除するとの文言はなし)
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「許せない」とはどういうことか、合理的には解釈できない。 ▼ 遺言書解釈に関する最判S58.3.18 ▼ 遺言書作成当時の事情:従業員と駆け落ちした妻に対して作成した遺言 ▼ 廃除申立て必要 |
一円の金もやれないし、うちの物や退職金などには指一本触れさせへん。 (Bを廃除するとの文言はなし)
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遺言が「遺産分割方法の指定」か「相続人廃除」か、遺言の記載だけでは合理的に解釈できない。 ▼ 遺言書解釈に関する最判S58.3.18 ▼ 遺言書作成当時の事情:親族との折り合いが悪く、心身共に極度に疲労し、事実上夫婦としての結びつきが破綻に瀕していた ▼ 廃除申立て必要 |
令和2年1月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔
生前贈与などがあるかもしれませんが、遺言執行者には調査権限がありません。また、一部相続人の味方をすることは、利益相反になるので、できません。減殺請求は長引くことが多いので、「〇日までに遺言執行停止の申立をしないときは執行を続けます。」との内容証明を遺留分減殺請求を行った相続人に通知して、それでも反応がなければ、執行を続けるようにしています。
(平成29年3月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)
当職は、遺言執行者にはそこまでの権限も義務もないと考えています。詳細は、下記法律事務所のHPが分かりやすいと思いますので、ご参照ください。
遺言執行者による取引履歴の開示請求(しのだ法律事務所@神奈川県海老名市)
遺言執行者の権限で元帳開示請求が可能か?(消極)
調査義務あるか?(消極)
(令和3年8月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)
遺言執行者が指定されている場合は、相続人は勝手に遺産分割をすることができません(民法1013条)。相続人が勝手に行った処分は無効です。 その旨警告を行ない、さっさと遺言執行する必要があります。また、勝手に登記された場合には、抹消請求する必要があります。 なお、相続人全員から遺言執行者の辞任要請があれば、家裁に辞任許可申立を行なったうえで、許可が得られれば辞任することも可能です。その場合、相続人は、遺言と異なる遺産分割協議を行うことが可能となります。
(平成29年3月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)
遺言と異なる遺産分割協議を行った場合でも、受遺者である相続人から他の相続人に対して贈与があったものとして贈与税が課されることにはなりません。
(平成29年3月・国税庁タックスアンサー4176参照)
遺言書は、遺言執行者の地位の根拠にかかわります。次のとおりに扱うべきです。
(平成29年3月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)
場面 | 対応 |
遺言執行者自ら、遺言が無効だと思った場合 | 遺言執行者から遺言無効確認訴訟を提起すべき |
遺言執行者は、遺言が有効だと思ったのに、相続人から無効主張あった場合 |
遺言を執行すべき ∵有効と思いながら執行しなければ解任事由(福岡家裁大牟田支部審判S45.6.17) |
次のように対応します。
(平成29年3月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)
場面 | 遺言執行に反対の相続人 | それに対する遺言執行者の対応 |
遺言執行者に解任事由あるとき |
遺言執行者解任審判申立(民1019) + 遺言執行者職務執行停止の審判前の保全処分(家215) |
解任されると、他の法定代理人の欠格事由となるので、解任の効力を争うor辞任許可申立が必要 |
遺言が無効であると思うとき |
(地裁に、遺言執行者の職務執行停止の仮処分) + 遺言無効確認訴訟 |
遺言無効確認訴訟は無視できない。 ∴執行ストップ |
受遺者が遺贈を放棄したので、遺言が失効した |
×遺言無効確認 ×遺言失効確認 〇(執行者に対する遺産の)給付請求 |
適正な遺贈放棄かを判断 ┌特定遺贈:いつでも放棄(民986) └包括遺贈:家裁へ包括遺贈放棄申述 |
民法1013条に「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言執行を妨げる行為をすることができない。」とあります。処分制限効といいます。処分制限効が働いているときを、図に示すと、次のようになります。
(平成29年3月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)
場合 | 処分制限効 |
遺言書に遺言執行者と指定された者が、いまだ就職(就任承諾)していない場合 |
処分制限効が働く(最判S62.4.23) |
遺言書に指定された者が、就任辞退(相続人に「遺言執行者就任辞退通知書」を交付した) |
処分制限効は働かない。 遺言書に反する遺産分割協議可能。 |
遺言執行者が、家庭裁判所の許可を得て、辞任した |
処分制限効は働かない。 遺言書に反する遺産分割協議可能。 |
遺言通り執行して欲しい相続人【1】は、遺言執行者選任申立 |
選任されると、再度、処分制限効が働く |
【1】遺言書はあるが遺言執行者の定めがない場合や、遺言書に定められた遺言執行者が就任辞退又は辞任した場合
確かに、信託銀行の遺言執行報酬は、破格に高いですね(笑)。
就任前であれば、比較的簡単に、就任辞退してもらうことが可能です。 就任後であれば、家庭裁判所に辞任許可申立をするよう銀行を説得しましょう。