銀行預金の仮払い制度(遺産分割前の預金払戻し)


遺産分割協議がまだ終わっていなくても、預貯金の仮払いを受ける制度が新設されました。

 

令和元年7月1日から、次のとおりの手続で仮払いを受けることが出来るようになりました。

仮払い制度の特徴


仮払いには、次のような特徴があります。

 

1.いつ開始した相続でも、仮払いを受けられます。

法施行(令和元年7月1日)以前に開始した相続でも、仮払いを受けられます(経過措置)

2.早い者勝ちです。

払戻しの計算は「相続開始時」の預金額をもとに計算しますが、他の相続人が相続開始後に(ATMなどで)引出しをして預金がゼロになっていた場合には、仮払いを受けられません。

なお、被相続人の死後、それを銀行に告げずにキャッシュカードで預金を引き出す行為は違法ですが、他の相続人が強行してしまうかもしれません。

3.仮払金の使途は何でも構いません。

4.仮払を受けた場合、その金額分を遺産分割の際に、差し引かれます。

制度新設の背景


(平成23年まで)遺産分割前であっても、預金を引き出せていた

銀行預金は、可分債権(割ることが出来る請求権)なので、相続開始と同時に、法定相続分で当然に分割されていました。

そのため、遺産分割協議が成立する前であっても、自分の法定相続分を引き出せました。

これによって、葬儀費用、準確定申告の所得税、相続税の支払いをすることが出来ました。

(分割が終わっているので、遺産分割審判の対象にならない。預貯金で各相続人の相続分を微調整出来ないというデメリットも)

最高裁平成28年決定、平成29年判決で、引き出せなくなった

●平成28年12月19日最高裁大法廷決定・遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件

要旨 共同相続された普通預金債権通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる。
理由 

最高裁は、色々言っていますが、結局は、遺産分割審判では、預貯金を対象に出来ないので、各相続人の相続分を微調整出来ないというのが、判例変更の大きな理由かと・・・ご興味おありの方は、下記リンクをご覧ください。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/354/086354_hanrei.pdf

●平成29年4月6日最高裁第一小法廷判決・預金返還等請求事件

要旨 共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。
理由 定期預金については,預入れ1口ごとに1個の預金契約が成立し,預金者は解約をしない限り払戻しをすることができないのであり,契約上その分割払戻しが制限されているものといえる。そして,定期預金の利率が普通預金のそれよりも高いことは公知の事実であるところ,上記の制限は,一定期間内には払戻しをしないという条件と共に定期預金の利率が高いことの前提となっており,単なる特約ではなく定期預金契約の要素というべきである。他方,仮に定期預金債権が相続により分割されると解したとしても,同債権には上記の制限がある以上,共同相続人は共同して払戻しを求めざるを得ず,単独でこれを行使する余地はないのであるから,そのように解する意義は乏しい(前掲最高裁平成28年12月19日大法廷決定参照)。この理は,積金者が解約をしない限り給付金の支払を受けることができない定期積金についても異ならないと解される。

令和元年7月1日改正相続法施行

●民法909条の2(遺産の分割前における預貯金債権の行使)

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす

この法改正によって、銀行預金は、

●葬儀費、準確定申告の所得税、相続税の一部を予め引き出せるとともに

●遺産分割審判での相続分調整機能も維持

できることになりました。

具体的な仮払い限度額の計算


  金額による上限

又は

(少額の方)

割合による制限
金融機関ごと 150万円 (関係ない)
支店ごと (関係ない) (関係ない)
預金種類ごと (関係ない)

相続開始時の普通預金額×1/3×法定相続分

相続開始時の定期預金額×1/3×法定相続分

2つの計算の結果、少ない方の金額が仮払いを受けられる金額になります。

銀行預金仮払い手続の流れ


相続開始

預貯金の凍結

他の相続人がカードを持っている可能性があるときは、直ちに口座凍結をすべきです。

金融機関によっては、電話をするだけで止めてくれます。

ご予約

お近くの『あなたのまちの司法書士事務所グループ』にご連絡ください。

打ち合わせ

お亡くなりになった方と、相続人全員(わかる範囲で)の住所地・本籍地をお知らせください。

本人確認をさせていただき、5万円程度の費用をお預りいたします。

各市町村役場へ請求

司法書士から各市町村に戸籍謄本の交付を請求します。

収集完了

被相続人の戸籍が、出生から死亡まで、つながったら完了です。

相続関係説明図の作成

収集した戸籍に基づき、被相続人と相続人の関係がひと目でわかる相続関係説明図を作成します。

法務局へ提出

法務局でチェックを受け、相続関係説明図は、法定相続情報一覧図になります。

金融機関へ仮払請求

司法書士から金融機関へ仮払請求をいたします。

費用の精算

ここまでの費用をご精算いただきます。

その他の手続へ

事案により、ご依頼によりその他の手続をお請けします。

司法書士の報酬・費用


業務の種類 司法書士報酬 実費
戸籍収集 親子間の相続 11,000円(税込)~ 3,000円~
兄弟間の相続 22,000円(税込)~ 5,000円~
お子様のいない夫婦間の相続 22,000円(税込)~ 5,000円~
相続関係説明図作成 33,000円(税込)~ 0円

 

相続関係説明図を法務局に提出し法定相続情報証明書 11,000円(税込)~ 1,040円
銀行預金の仮払い手続 55,000円(税込)/銀行 交通費
日当(移動時間が1時間ごとに)【1】 11,000円(税込)  

 【1】原則郵便による調査や、最寄り銀行支店での手続を行いますが、特急での調査をご依頼いただいた場合や、銀行支店が近隣にない場合でやむを得ず出張する場合に、申し受けます。

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